【今週の通勤BGM~僕を奮い立たせた音楽、僕を癒した音楽~vol.1】
「この人、普段どんな音楽を聴くんやろう?」
「この人、どんなCD持ってるんやろう?」
僕もいろんな音楽ブログやレビューサイトを覗くが、その度にこんな興味を持つ。
気になれば、そのブログの最新記事をいくつかチェック。
もっと気になれば、第1回目から遡り、全記事をチェック。
そして、筆者の音楽性や趣向を知り、自分の音楽世界を広げていく。
“Another Style For Music”という僕のブログに出逢ってくれた人の中で、僕にそんな興味を湧いてくれる方がいるのかもしれない。
ということで、こんな企画を始めてみることにした。
「今週の通勤BGM~僕を奮い立たせた音楽、僕を癒した音楽~」
日常生活で一番音楽を聴いている時間が長いのは、通勤時間。
家でBGM的に流している時は、生活音や近所の音なんかも耳に入ってしまう。
しかし通勤時はイヤホンを両耳に差し込んで聴いているので、その音楽しか入ってこない。
無論、耳のことや安全面を考え、爆音にはせず、車内アナウンスが聴こえる程度のヴォリュームで音楽を聴いているので、ご安心を!
僕含め、音楽が大好きな皆さん。耳は大事にしよう!
そして、ついでにもう一つ、自転車を運転している時は、イヤホンはせず、音楽はやめよう!
通勤時は基本、スマートフォンと向き合い、ニュースやSNS、ネットをチェックするか、ブログのネタ出しするか。たまに読書。
しかしけっこうしっかりと音楽を聴き込めていて、いろんな気づきがあったりする。
自宅で聴いているときには気づかなかったマジックを、こういう時に気づくことがある。
仕事場へ向かう時、自分を奮い立たせる音楽。その時に感じた一言。
家へ帰る時、一日の疲れを癒す音楽。その時に感じた一言。
毎日聴いた音楽、そして感じた一言を少しずつまとめていこうかなと。
普段のブログが超絶に長い文章の為、この企画についてはすっきり一言で引き締めていこうと思っているけど、熱中するとどうなるか…
では、スタート!
10月9日(火)
・出勤:SURVIVE ”Immortal Warriors” (2018)
IMMORTAL WARRIORS (イモータル・ウォリアーズ)
- アーティスト: SURVIVE,サヴァイヴ
- 出版社/メーカー: Rebel Recordings
- 発売日: 2018/09/12
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
先月、9月17日。
渋谷のClub Asiaで開催されたSURVIVEの20周年ライヴは凄まじかった。
20年の戦い続けた結果のバンドとして、人間としてのデカさを照明したショー。
そして、日本で、海外で、大御所メタルバンド、レジェンドメタルバンドたちと回った経験が爆発したショー。
このアルバムは、この20周年ライヴ約1週間前に発売された、通算7枚目。
20年のキャリア、厚みが詰まったドラマチックなエクストリームメタルの傑作。
20周年記念のショーは、来日バンドを観ているような心地になった。
ほんまにゴツかった。
あの日に得たパワーは約1か月経った今も冷めず、連休明けのテンション低い出勤、SURVIVEで決まり!
【Immortal Warriors アルバムトレーラー】
SURVIVE - Immortal Warriors Crossfade
【Immortal Warriors (Music Video)】
Survive - Immortal Warriors MV
恐らくバンド史上最もキャッチ―。ライヴでは皆と一緒にコーラスできる感じが見事。
“不滅の戦士”というタイトルの曲は、SURVIVEのリーダー、NEMO氏(Vo./Gt.)の体験からくるもの。
彼は2017年突然の病に倒れ、生死を彷徨っていた。
これまでの19年間一人でバンドを支え、大きくし、突っ走ってきたことが原因。
何とか復活した時、そこにはバンドメンバーがいて、ファンがいた。
そこで感じた心と闘争心を歌った曲で、バンド史上初、演奏シーンはそこそこに、演技を全面に出した、ショートフィルムのような映像作品。
曲良し、歌詞良し、ファンともコーラス出来ライヴ映え良し、とバンドとして最高の曲が書けたのではないか。
・帰宅:渚ようこ “Yoko Elegance~渚ようこの華麗なる世界~” (2002)
いつかまた詳しく書くが、僕は「昭和歌謡」と言われる音楽が好きだ。
僕が音楽に好む要素、「カラフル」「哀愁」「ドラマ」がそこにはあるから。
渚ようこ…この存在を知ったのは、このアルバムで彼女をプロデュースした人、横山剣さんのバンド、Crazy Ken Bandで剣さんとデュオした曲、“かっこいいブーガルー”(2001年リリースのマンモスシングル『肉体関係』収録)。
気怠い感じで、艶っぽく歌う姿がかっこよく、僕は惚れた。
そんな人が突然、この世を去った。
休日出勤に出ていた9月30日(日)。帰宅中に知ったこのニュースに、僕は唖然とした。年齢不詳とは言え、まだ40代なはず。
彼女は昭和から歌っていた訳ではない。しかし僕が昭和歌謡というものに興味を持つ頃に知った声で。僕にとっては、昭和歌謡の女声の基準が、渚ようこだった。
男前で深みがあり、過去に影のあるも強く逞しく生きる女性…1970年代の日活映画によく観た女性の印象を持つ声。
彼女は謎めいた人で、生年月日不明。詳しいことは分からない。そんなところも、日活アクションロマン映画に出てきそうな感じ。
このアルバムは、6枚目のミニアルバム(ライヴやベストアルバムを含む)で、Crazy Ken Bandの横山剣プロデュース。
音楽性は、横山剣ワールド全開。ソウルフルでカラフルなポップスという剣さんの世界観に、キャバレー感を加えると、渚ようこになる。
1曲目は、1960年代のアメリカンポップスの軽快さと、フレンチポップスのファンタジックさを併せ持つ…と思いきや、1969年発表された浅岡ルリ子さんのカバーだった。
そして2曲は昭和歌謡のビッグバンド、4曲目は、昭和歌謡の空気を持ったブルーズから始まり、華々しく明るく盛大に展開していく。
8曲目~12曲目がそれまでのカラオケ版なのが勿体ない気もする。
彼女の絶品の声をもっと堪能したいと思わすが、この昔のカラオケ感もいいのかな。
全体的に、
「一人の女性の喜びと哀しみを歌ったキャバレーで展開されるミュージカル」
といった印象の一枚。
新宿のゴールデン街に店を持っていたそう。酒呑みの俺は、行けばよかったと、今更知ったことを後悔。
【第三京浜】
優しいほがらかな声。そして優しいピアノとサックスで展開される、大人な一曲。
「夜のハイウェイ。青白い光の中車が走り抜ける。オレンジのヘッドライトに灯され、しっとりと歌う一人の女性」
そんな姿が見えてくる。
【ニュートーキョー】
ベースラインがかっこよく、メロディーを描くキーボードサウンドが煌めきをもたらし、サックスを筆頭に管楽隊が味をつける…。
そんなバックを従える渚ようこが強く歌い上げる。これぞ、キャバレーミュージカル!
10月10日(水)
・出勤:DAMAGEPLAN ”New Found Power” (2004)
気怠い朝。仕事にもやる気が出ない朝に、
「起きろ―!さぁ、負けんなよ。闘うんだ。大丈夫、俺らはお前を信じてる。周囲の奴らをビビらせてやれよ!」
なんて、強くかっこいい先輩から、肩叩いてもらう感じ!
90年代、へヴィメタル界に革命を起こし、新たなへヴィロックの形を示したバンド、PANTERA。その中心にいたアボット兄弟がPANTERA解散後創設したバンドの1枚目。
この翌年悲劇が起こり、バンドは1枚で解散となるのだが、この作品が本当に強力。
PANTERA時代より棘は無くなったし、ギターも速弾きをそこまで前に出してないので、初めて聴いた時はあんまり好めなかったのだが、僕の耳や感性がまた成長したのか、今聴くと傑作へヴィアルバムだと分かる。
全体的にコクのあるヘヴィグルーヴが漂う。ギターもドラムスもベースもヘヴィなパワーを爆発させているが、尖り過ぎず、耳に馴染み易い。バランスがいい。
ヴォーカルも同様。叫んでいるがメロディーを歌っているし、時にクリーンヴォーカルでも歌っており、味わい深い。
オフィシャルビデオが無いので紹介できないのが残念だが、アボット兄弟の復活を祝す1曲目”Wake Up”の破壊力の凄まじさ、ムカつく奴へ心の中で睨みを効かせる5曲目“Fuck You”の爽快さは絶品。
改めて聴くと、ダイムのギターの世界観、怒声もメロディーも歌えるヴォーカルにより、多彩なヘヴィロックアルバムに仕上がっている。今後も長く聴き続けるだろう。
【Save Me (Official Video)】
Damageplan - Save Me { Official Video } W / Lyrics
リズム(リフ)やコーラスはモダンな印象。ヴォーカルもメロディックに歌い上げる。
この曲でダイムはギターをユニークに遊んでいて、言うなれば歯医者で耳にするドリル音のような感じで、一聴して彼と分かる。
独特の金切りギタートーンの10秒~・35秒~がそれ!
【Breathing New Life (Music Video)】
Damageplan - Breathing New Life Music Video W/ Lyrics
気持ちいいグルーヴで、怒声が響く一発。
この曲でもダイムの特徴的な、また独特なギターが堪能できるが、ここで特筆すべきはダイムの兄貴、ヴィニ―のドラムス。
一打一打かなり重いが決してもったりせず、彼独自のグルーヴを産み出している。
というのも凄く生々しい、CDというメディアを通して聴いているが、目の前で叩いているかのような生っぽさを感じる。
そして機械的ではない肉厚なドラム。ドラムヘッドのうねりが伝わってくる感覚。音楽仲間の先輩が言っていたが、「ヴィニ―ほどノレるドラムスはいない」
・帰宅:無し!
ふだん帰宅時に音楽を聴かないなんてありえないが、会社の宴会があり、また僕が祝される宴席だったため、深酒の末にタクシー帰宅という有り様(笑)
酔い潰れた訳ではなく、ただ同僚と共にタクシーに乗っていたので聴けず。
10月12日(木)
・出勤:無し!
何と出勤時音楽を聴かないという、レアな日。
前夜の酒が残って多少の二日酔いはあったが、ただ眠かっただけ。
そしてこの朝は仕事で郊外の方まで1人向かっていたので、気持ちがのんびりしていた模様…
・帰宅:NEAT 001 “Into The Light” (2018)
一日疲れたんで、なんかこう、楽しさが欲しい…ということで、この間の日曜に手に入れた大阪のバンドを。
10月7日(日)、名古屋のRevenge.69ってバンドが東京でライヴするということで、四谷アウトブレイクというライヴハウスへ行ってきた。
そのRevenge.69のリーダーが大絶賛する大阪のバンドがこのNEAT 001。
ショーが本当楽しく、他に聴いたことの無い音楽だったもので、14年振りの2ndアルバムを買ってみた。
また詳しくCDレビューを書きたいと思うので、ここではサクッと。
NEAT 001はギター、ヴォーカル、ドラムスが女性、ベースが男性の4人組。
とにかくドラムスは楽しそうで、ヴォーカルはちょっと艶っぽさを見せ、ギターは始終笑顔で走り回る元気な人。
元々はヘヴィメタル出身だけど、ロックンロールやパンク、オルタナなどいろんな音楽を混ぜて、それぞれの「楽しい・元気」な要素を全面に押し出したような音楽。
このアルバムジャケットのような、晴天の遊園地で遊び回っている感じかな。
自然と元気に笑顔になれる楽しい一枚。
【Into The Light アルバムトレーラー】
NEAT001 2nd album "Into The Light" trailer
【Into The Light】
アルバム中異彩を放つ、じわじわ聴かせる一発。
語りから入り、狂気を見せるヴォーカルの叫びは、The Doorsのジム・モリソンを思わせる。
10月12日(金)
・出勤:KREATOR “Hordes Of Chaos” (2009)
今思い返せば、これは僕の人生を変えたアルバムの一枚。
とにかく漢気溢れるドラマチックでメロディックな一枚。僕をスラッシュメタルという、スピードと過激性を備えたメタルの世界へ誘ったアルバム。
大学生まで、スラッシュ四天王と呼ばれるMETALLICAやMEGADETH、SLAYERも聴いていたけど、僕の中でヴァイオレントなものってなんか違うのかな?と思っていた。
しかし上京し、社会人デビュー。
大人の世界、世の中の複雑さ、厳しさ、勝手さを知ってかどうか分からないが、もっと自分を鼓舞し、闘争心を燃やし、自分の夢へ向かおうなんて気合いがどんどん高まっていた。
そんな時、その心意気にピッタリな音楽、スラッシュメタルに没頭する。
日本のOUTRAGEに出逢い、完全に惚れた。
海外のバンドでは、ドイツのベテラン、スラッシュ3羽カラスの一つ、このKREATORに魅せられた。
何かのきっかけでYouTubeでこのアルバムのタイトルトラックにして1曲目のミュージックビデオを観て、僕の心は燃え上がった。
アルバムを手に入れ聴いてみると…それまで僕が抱いていたスラッシュメタルの「ただ速く、突っ走る怒声」なイメージと違い、正統派な音がたくさん聴けた。
メロディーがたくさんあった。漢気溢れるドラマが詰まったアルバムだった。
【Hordes of Chaos (Music Video)】
マッチョな男2人が1人の女性を巡って?戦う中、バンドが演奏するこのビデオ。
これが僕の音楽世界をまた一つ、押し広げた作品。
このヒロイックなイントロと、心を燃やしていく、高めていく曲のイメージが、映画”300”のような世界観にピッタリ。男の中の男は、惚れること間違いなし。
こういう映像がジムとかで流れたら、もっとメタルファンって増える気がするんやけどな~
【Destroy What Destroys You (Official Video)】
KREATOR "Destroy What Destroys You" (OFFICIAL VIDEO)
不穏なメロディーと奇妙なドラムリズムで始まる力強い一曲。
「お前を壊す者を壊せ」
という曲名、そしてこの言葉を叫び歌うコーラス。
「生きていて出逢う敵、ムカつく出来事、人生を阻む天災…そんなものに負けるな、俺がついているから」
というバンドからファンへの応援ソングな気がする。
・帰宅:DOWN “Nola” (1995)
週末に入るのだが、仕事を家に持ち帰っていることと、週末にライター業でも書きたいものが多くあり、気合を…と選んだのがこの一枚。
ジャズの発祥の地としても言われるこの土地は、へヴィで埃っぽく、無骨な男たちのへヴィロックの街でもある。
この都市出身者や住む者で結成されたスーパーグループがこのDOWN。
PANTERA, Corrosion Of Conformity, Crowbar, Eyehategodと、へヴィミュージックの世界では有名なバンドのメンバーから成る。
肉、ビール、大きな空、大きな男、髭、スキンヘッドと、アメリカの肉体労働者と言われ思いつくイメージを上手くミックスさせた音。
とは言え決して無骨なものばかりではなく、繊細なアコースティックギターの美しいメロディーや夢の中で泳いでいるようなトリップ感ある曲など様々。
ゴツイ男たちだけど、その見た目ではイメージつかない、芸術家っぽい印象を受ける曲も多い。
よくハードロックの開祖と呼ばれる、Deep PurpleとLed Zeppelin。
前者は欧州で後者はアメリカで人気な印象があるが、DOWNの曲にも、Led Zeppelinからの印象をよく感じる。
【Stone the Crow】
SURVIVE20周年記念ショーでも開場時流れていた、男泣きのへヴィなバラード。
アメリカらしい大きな自然を感じさせる、そこで叫び上げる一人の男の哀しみと言った具合か。
本家Corrosion Of Conformityではリズムに徹するペッパー・キーナンが印象深いギターソロを決める。
今週聴いていたDAMAGEPLAN。そのアボット兄弟が元々組んでいたバンド、PANTERA。
PANTERAがロック界に革命をもたらした要素の一つはその凶暴なヴォーカル、フィリップ・アンセルモの声にもあるが、そいつがバラードを歌うと、こんなにも深い哀しみを放つ。
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【音楽界のアスリート、DOWNFALL:ウルトラC満載の音楽世界】
音楽に飢えていた1人のミュージシャンがいた。
とりわけ、超絶技巧テクニックに満ちた音楽を渇望する、1人のミュージシャンが名古屋にいた。
SchopferやGIGATON、HELL AND HELLというアンダーグラウンドの過激なメタルバンドを渡り歩き、またこのブログでも紹介した、Crocodile Bambieでサポートした経験もあるギタリスト、カスヤ氏。
彼は、名古屋のメタルシーンでもその超絶テクニック、とりわけ、超光速奏法で有名なギタリストである。
15年以上に渡り、東京・名古屋にて数多くのバンドを経験した後、一旦バンド活動を辞め、セッションイベントに顔を出すようなスタイルをとっていた。
そんな日々が続く中、「名古屋に自分が好きな、とにかく速いデスメタル、スラッシュメタル系のバンドがいない」ということから、(恐らく自身初の)リーダーバンド結成を構想するようになる。
『超絶テクニカルギタリストが、過激なヘヴィメタルの究極な像を追求』となれば、ただ事ではない。
まずは、カスヤ氏ひとりで完璧なデモを制作。
対バンやバンド繋がりで知り合い、バンドを組むことになったドラムス、ベーシストにそのデモを渡し、曲を完全に再現する為に日々スタジオに籠り、徹底的に練習する。
(参照:https://www.facebook.com/Downfallinsanity/photos/a.1815735415354370/1816676088593636/?type=3&theater)
2017年5月20日。バンド初ライヴにして、自主企画イベントを名古屋で開催。
名古屋の仲間のみならず、東京や大阪からも力のあるバンドがそのデビューを祝いにやってきた。
それ以降もスタジオ練習を重ね、修行しつつ、7月、10月、11月と年内計4本のライヴを行ってきた。
その年の11月。僕は名古屋でDOWNFALLのメンバーに遭遇したことがある。
Deadclawの復活ライヴを見に東京から遠征したのだが、Disk Heavenという老舗レコード店へ遊びに行った際、同じビルの地下にあるスタジオに練習に来たカスヤ氏と遭遇。
その数時間後、ちょっとしたきっかけがあってまたDisk Heavenに戻ると、練習を終えたバンドメンバー全員がいた。
少し話をさせてもらったのだが、
「ギターを弾き過ぎていて。ギターソロをやる必要もないかなってくらい笑」
とのカスヤ氏の発言があり、
「おいおい、どんだけ暴虐なサウンドやねん」と、心の中でツッコみつつ、僕は心の中でニヤリとした。
J-POPをメインとし、へヴィメタルを知らないというベーシストは、「難しすぎてついていくのに必死」と笑いながら教えてくれた。
伝え聞く、とにかく速いデスメタルという暴虐さのイメージとは打って変わって、優しい和やかな空気の、いいバンドだった。
かなり超絶技巧な過激メタルサウンドだと分かったが、この温和な3人からは想像もつかない。バンドに対する僕の興味は、急上昇していった。
まだ結成して間もないバンド。関東でのライヴはまだ先かなと思っていたが、予想以上に早く、その夢は実現した。
(参照:https://photos.google.com/search/_tra_/photo/AF1QipOEywL-C7CQRd1xbtL2X3Gd9Ea9tfhdAh5hqv1O)
2018年4月28日。同じ名古屋で活躍するPunhaladaの横浜企画に帯同することとなった。会場は、西横浜のメッカ、El Puente。
この会場はいい意味で狭い。一段上がったステージというものは無く、同じフロアで、同じ音楽に、ミュージシャンもお客さんもクレイジーになれる会場。
収容人数もそんなに多くないので、一体感が生まれやすく、他の会場にはない、温かさがある。
DOWNFALLの2018年1発目のライヴは、この横浜での遠征。
結成以降、鍛え続けてきた成果を慣れぬ土地で披露するのだが、結果として、成功であった。
ストレートで、超光速で、過激なメタル。
並大抵な努力では演奏できない、スピードと暴虐性を兼ね備えたメタルは、結成2年目のキャリアとは思えない、完全に他者を圧倒する破壊力、殺傷力を持つ、鋭さ極まりない音であった。
カスヤ氏はギターを人間離れした速さで刻み、音数を詰め込む。
時にヘヴィでスローなリズムに転じるがそんなもの束の間で、基本的にどの曲も速さ極まりなし。
ギターソロは、その超光速演奏の見せ場。
光速ピッキングなのだが、一つ一つの音の粒は立っており、それぞれの音を粗く潰すことなく、滑ったりぶれたりすることもなく、正確に一音一音をきちんと聴かせる。
高音の聴こえ方も素晴らしい。また、どこか独特なメロディーを聴かせてくれたりする。例えるなら…そうだ、『酔った』感覚!
カスヤ氏と言えば、SNSが面白い。
仕事帰りの帰宅BGMを毎日紹介してくれたり、毎晩の仲間とのお茶会の様子を上げてくれたり。過激な音楽が好きだけど、本当は愉快で優しい人なんだ。
『発泡性あるお茶を呑み気持ちよく酔う』
といういつもの感覚を表現したかのようなメロディーが、ギターソロの冒頭で聴ける。
丸みを帯びたメロディーから一転、強烈な光速ギターを繰り出し、ウルトラC級の技を決めていく。
リズム隊の2人も素晴らしかった。
つるんじゃないかと思うほどの強烈な両手・両足の動きで、楽曲の過激性を際立たせるドラムス。
ギターに寄り添ったリズムを作っていくベース。
光速で刻むことはないが、一つ一つ、丁寧に、シンプルなリズムで曲を支えた。
1曲ベースソロが入る曲があるのだが、きっちり正確に決める。
シンプルなリズムのベースに、エクストリームなメタルならではの音数の多いドラムス。
そして暴虐性を持ったスピード感溢れるギター・ヴォーカル。
ドラムス+ベース+ギターというバンド最小限の形=スリーピースバンドとあってか、
また、ギターに焦点を当てたバンドサウンドが明確だからか、凄いシンプルで分かり易いエクストリームなメタルだった。
ライヴは素晴らしく、歓声を浴び、幕を閉じた。
約5か月後の9月に、同じく西横浜EL PUENTEにてライヴを行う機会を得たのだが、
それは、東京を拠点に活動しているLifebloodの企画だった。
名古屋を拠点に活動するDOWNFALLとは接点の無いバンドの企画ということは、つまり、4月の西横浜デビュー戦が成功だったということ。
ショーを観ていたLifebloodのメンバーなのか、はたまたEl PuenteのスタッフがDOWFNFALLの関東デビュー戦を気に入り、呼ぼうとなったのだろう。
(参照:https://www.facebook.com/Downfallinsanity/photos/a.1906979579563286/2087155658212343/?type=3&theater)
あっという間に5か月が経ち、9月8日。DOWNFALLの関東2戦目当日となった。
会場に着くなり、ベースが変わったとカスヤ氏から聞き、
「もう笑うよ!」
と言われた。
「こんな過激な音楽で笑うってどういうことですか?」
と問い返すと、
「観てくれたら分かるから!新しいベーシストの加入は、俺の予想を遥かに上回った。」
調べると、コバヤシ氏という新ベーシストは、バリバリのメタルミュージシャン。
自身のプロジェクトとして、Charlotte The Harlotというブラックメタルをやっている。
音源を見つけたので、聴いてみた。
[ZDR 043] Charlotte The Harlot - Agamogir
これはいい!凄くいい!
アルバムジャケットを見るに、かなりおどろおどろしい音かと想像したが、いやいや、凄く聴き易い!
ヴォーカルは邪悪な悪魔感あるブラックメタルをベースとした音楽だが、音は正統派メタル。
そのバンド名に由来する、メタルのレジェンド、IRON MAIDENを思わせ、メタルキッズなら一発で乗れるキャッチ―なもの。
また、コーラスパートも入っていて、ますます好感触!
そんな彼が入った新体制DOWNFALLの初ライヴがなんとこの日、西横浜戦だった。
また、前回の西横浜以降ライヴが無かったとのことなので、僕は幸運にも、名古屋のバンドの交代の瞬間を西横浜で目の当たりにすることができた。
第2期DOWNFALLのデビューライヴ。
「いい、これはいい!」
もうこの一言に尽きる。バンドの音はかなり分厚く、過激さと多様性を増し、進化していた。
まずは、ベース。
ギターをフォローするリズムの音数は多く、バンドサウンドに厚みが出た。
ビックリしたのは、1曲目の歌い出しがこのベーシストだったこと!
自身のプロジェクトではヴォーカルを取っている為、DOWNFALLでもヴォーカルを取ることとなったのか。
カスヤ氏と同じく、邪悪なグロウル(=デス・ヴォイス)なのだが、2人の声は全く違う。
1人ずつ歌うとその違いは明らかだし、2人揃ってコーラスを歌うと、これまた新しい味わい。
カスヤ氏は、
「一人でギター弾きまくって、歌うのはきつい」
と、笑いながら前回のライヴ終わりに言っていたが、これは力強いパートナーと巡り合えたものだ、と安堵感に包まれた。
ベースソロではユニークな音でいい主張をするし、ギターソロの間のバックも音数を詰めてリズムを作り、バンドサウンドに抜けを作らない。
往年のロックスターの如く、また巨大なステージで演奏しているかの如く、アンプに身体を向けて音を歪ませたり、客に掛け声を求め煽ったり、拳を上げさせたり。
まさかエクストリームなメタルには意外なステップ踏んで踊ってみたり。
素早いフィンガーピッキングや音選びなどテクニックは申し分無いが、この音楽を、過激なヘヴィメタルを心から楽しみ、
その喜びを会場にいるお客さん全員と分かち合いたいという気持ちが爆発しているところが面白い。
次にドラムス。物静かで真面目なアオキ氏。
前回は気づかなかったが、今回はNapalm Deathのシャツを着用というところから、実は生粋のメタル愛を持っていて、過激な音が好きな方だった。
前回は、ギターばかりに僕の目と耳が注目してしまい、ドラムスはシンプルな連打とばかりに思っていたが、実は、かなりの技巧に満ち溢れたリズムを繰り出しているのが分かった。
基本的にはギターが引っ張っていくバンドなので、どの曲でもギターのリズムにドラムスがフォローする形なのだが、リズムパターンが多い。
ギターのリズムが変わる度にドラムスのリズムも変わり、速いもの、へヴィなもの、スローなものと様々なパターンを繰り出す。
両足の連打、片足のみ、両手の使い方、シンバルを挟むパートなどを見事に切り替え、丁寧にこなし、しっかりと決めた。
これは面白い。
このリズムの組み合わせを操るテクニック…かなりの努力をしているのだろう。
けっこうなウルトラC級技をこなしている。
さて、残すはギター。
結果として、今日も絶好調。
ギターを超絶なスピードで刻み、ソロでは音を詰め込み、アームで音を揺らしヴィブラートをかけ、独特なニュアンスを作り出し、
徹底的にギターを弾き倒し、遊び倒し、超絶技巧な必殺技を決めまくる。
約25分のショーはあっという間に終わった。
バンドは今日も圧倒的なテクニックを見せ、会場のメタルキッズを楽しませた。
同時に、3人とも心から楽しんだようだ。
セットリストが一通り終わった時、物静かなドラムスのアオキ氏は、安堵なのか、弾き切った達成感なのか、いい笑顔を見せていたし、
ベースのコバヤシ氏は終始へヴィメタルを楽しみ、笑顔を見せていた。
カスヤ氏も満足そうだった。
現在、DOWNFALLは、ギタリストを募集中。
「難しいからギターをもう一人入れて休みたい」
なんてことをカスヤ氏は言っていたが、
「そんな難しい曲を完璧に弾き切った時、凄い気持ち良く嬉しいでしょ?」
と返すと、ニンマリと頷いていた。
そう、超絶技巧とは、目の当たりにする聴衆を興奮させるのだが、それ以上に弾けた自分自身が喜びで満たされる。
子供の頃逆上がりができた時嬉しかったように、野球選手がホームランを打って興奮するように、ミュージシャンも超絶な演奏ができた時、たまらなく嬉しいもの。
この夜もライヴは成功したようで、他のお客さんからも音源を出してほしいとリクエストがあったそうだ。
以前なら、
「ん、まだかな~まぁそのうちにね」
と言っていたカスヤ氏も、この夜は音源制作に真剣な表情を見せていた。
メタルファン以外にも、音楽における超絶技巧の魅力が伝わっただろうか。
もしそういう人がいたら、このバンド、DOWNFALLに注目してほしい。
「0から1にするのは難しい」
とよく言うが、こんなに難しい曲を書き、バンドを結成させたカスヤ氏。
そして、バンドの一員となり、彼の理想の音楽を再現することに全力でサポートしていった第1期DOWNFALLのメンバーに拍手を送りたい。
彼らがいなかったら、バンドは成立していなかったかもしれないし、僕らファンを魅了できなかったかもしれない。
そして、その活動を更に推し進めることになった第2期DOWNFALLに期待したい。
彼らの次のライヴは、10月25日の名古屋。
フランス、ノルウェー、オランダのバンドとタイバン。
カスヤ氏は言う。
「名古屋にもこんな凄いバンドがいるってことを知ってもらいたい」
なんとも力強い言葉だが、
「そして終わったら、日本のソウルフードであるハッピーターンをプレゼントする」と、相変わらず心温まる優しいジョークで和ませてくれる。
そして、こうも加えた。
「名古屋と言えばOUTRAGE。30年以上も第一線で曲を発表し演奏しているあの人たちは凄いが、負けたくない」
10月25日の名古屋での国際戦は、どんな結果になるのか。
それほど待たずして、音源を発表するのか。
第3期DOWNFALLは結成されるのか。
結成2年が終わろうとしているバンドは、将来に向けて非常に明るい眼差しを持っている。
これからどんなバンドに成長していくのか、僕は楽しみで仕方無い。
次に僕がこのブログでDOWNFALLを取り上げるのは、きっと、音源を発表する頃だろう。
音と歌詞からインスピレーションを得て、どんな世界が見えるのか、そこに焦点を当てて、書いてみることにしよう。
西横浜での成功を思うと、音源があれば、きっと全国のいろんな人たちを魅了できるだろうと確信できる。
2019年か2020年か。
ゆっくりでも着実に修行し、鍛え続けるバンドなので、音源がリリースされる日が早く来ることを望みつつ、バンドの歩み方を尊重し、その日をじっくりと待とう。
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【音楽界のアスリート、DOWNFALL:音楽におけるウルトラC】
「十人十色」
と言うように、人の好みや価値観はバラバラのはずだが、スポーツという分野に熱狂する人は多い。
例えば、オリンピックやワールドカップで、日本が予選を突破した、優勝争いに食い込んだとなると、自分のことのように喜ぶ人は多い。
仲間とスポーツバーに行って、ユニフォームを着て応援する人。
選手が人間業とは思えない、超絶技巧を決めると興奮する人。
翌日のニュースやワイドショー、新聞、SNSはその話題一色。
職場や学校は、その話題で持ちきり。
そして、選手の裏側を追った映像、日々の鍛練や精神性に迫ったドキュメント番組を見て、感動し、涙する。
では、スポーツ以外の分野、音楽の世界ではどうだろう。
音楽に勝敗は無いものの、スポーツ選手が体操でいうウルトラC級の超人的な技をやってのけるように、一般人では考えられない超絶技巧、人間離れした技で演奏することがあるのだろうか?
答えは、「YES」。
もちろん、楽器を演奏すること自体、一般人からすれば凄いことなのだが、プロの中でも段違いのテクニックを持つミュージシャンがいる。
そんな超絶技巧が顕著に現れている世界が、『へヴィメタル』である。
今回の記事で紹介するバンドは、名古屋のDOWNFALL。
2016年結成とまだ新しいバンドについて、第1期~第2期の流れを書いていく。
さて、なぜ冒頭にスポーツや超絶技巧について話したのかというと、執筆に当たり、どういったテーマがこのバンドを表現するのに伝わり易いのかなと考えていくと、
「超絶技巧のアスリート集団」というイメージに辿り着いた。
バンドの創設者でギター・ヴォーカルを務めるリーダーのカスヤ氏と話していた時、
「超絶を極めた時の快感」なんて話題にもなったので、今回は、音楽における超絶技。
エクストリームスポーツならぬ、『エクストリームミュージック』をテーマに、バンドのお話をしよう。
この記事を読んでくださっている方々は、メタルファンが多いと思うが、そうではない方もいると思うので、バンドについてお話する前に、まずこの記事では、
【音楽界のアスリート、DOWNFALL:音楽におけるウルトラC】と題して、へヴィメタル界の曲芸をいくつか簡単に紹介しよう!
今回は2記事同時掲載なので、そんなの知っているっていうメタルキッズは、次の記事【音楽界のアスリート、DOWNFALL:ウルトラC満載の音楽世界】へ!
そもそもなぜ、へヴィメタルにそこまで曲芸が生まれるのか…
いろんな本やインタビューを読んできたが、その答えを読んだことは無い。
へヴィメタルと真剣に向き合って16年で見聴きしたことから想像するに、次のようなものかなと考える。
・へヴィメタルが『男のロマンの音楽』だから。
⇒超絶技巧を決め、他のミュージシャンよりも凄いことをやってのけたい。誰も書いたことの無い曲を書きたい。
・へヴィメタルがヒロイックな音楽だから、強さを見せたい。
⇒必殺技、超絶技を決め、ドラマチックな曲を書きたい。
・そこに興奮するファン、凄いと感激するファンがいる。
・超絶技巧の音楽=クラシックをベースとした曲があるから。
さてさて、『超絶技巧』と4文字熟語でシンプルに伝えることはできるが、メタルに慣れてない人にとっては、よく分からないはず。
そこで、代表的なミュージシャン、バンドの映像をいくつか紹介しよう。
メタルファンの方からは、
「このバンドより、こっちじゃない?」
「いや、あのバンドよりもこれでしょう」
なんて意見が出るのは百も承知だが、あくまでもこの記事は超絶技巧だけを紹介する記事ではなく、DOWNFALLの話をする前のエクササイズということなので、その辺はご了承ください!
①RACER X “Scarified”
Mr. Bigのギタリスト、ポール・ギルバートと言えば、その名を聞いたことがある洋楽ファンもいるかも知れない。
このバンドは本当に日本で人気があり、ジャパンツアーを行うとなると、東京は武道館公演、その他名古屋・大阪でも大きな会場でプレイするし、仙台や福岡、金沢と、他の来日バンドが廻らないような地方都市も訪問し、ライヴをやる。
比較的ポップで聴き易く、一方でテクニックも持った楽器陣という点からも幅広い客層を持つ。
そんな彼が、Mr.Bigの前に組んでいたバンドが、超絶技巧テクニック満載のへヴィメタルバンド、RACER X。
このライヴ映像は再結成後なので、オリジナル編成のツインギター体制ではない。
また、ヴォーカルなしのインストゥルメンタル曲ではあるが、彼自身のテクニックがストレートに伝わる映像になっている。
ポール・ギルバートの指の動きと正確さに注目してほしい。
ギターを弾かない人は、この曲に合わせてエアギターしてみよう!
ギターのネック上を走る左手の動き、右手のピックさばきがアホみたいに速い!
メロディーがブレることはないし、一つ一つの音がきちんと際立っていて、正確だということ分かってもらえる。
また、ギターと同じ動きをしているベースも神がかっている。
ベースの音はバンドサウンドでは埋もれがちとよく言われるが、この映像では判別し易い。
よーく聴いてみよう。
メロディーをクリアに演奏しているギターに対し、少し太く粗い、歪んだ音で同じくメロディーラインをなぞっているのがベース。
ギターよりも太い弦のベースは、左指の押さえる力、右指の掻き鳴らす力がかなり必要になる。
またこのベーシストはピックではなく、指弾きということを踏まえると、ベーシストのジョン・アルデレッティもアホってことが分かる。
余談だが、ポール・ギルバートは、90年代に放送していたKinKi Kidsの番組”LOVE LOVE あいしてる”にも準レギュラーとして参加していたこともある。
2年間日本に住んでいたし、嫁さんは日本人だし、日本語で歌ったヘンテコな曲まで作っている。
参考までにその曲を紹介しよう!
「Boku No Atama(ぼくのあたま)」という意味不明な曲だが、けっこう気持ちの良い爽やかなポップソング。
初めてラジオで聴いた時、もうジョークかと笑い転げた。
②Dragonforce “Through the Fire and Flames”
Dragonforce - Through the Fire and Flames [OFFICIAL VIDEO]
同じくバンド全員が超絶なのだが、もうサーカスのように曲芸をキメまくるのが、Dragonforce。
メロディーとスピードを兼ね備えたメタルバンドは世界中にウン万といる。
メロディックスピードメタルと言われ、2000年代初頭、メロスピブームなんてのも起こった。
2000年にリリースしたデモが注目され、2003年リリースした彼らの1stアルバムは、そのシーンにいたバンドたちを遥かに飛び越えていたスピードを持っていた。
もうエクストリームスポーツのような感覚、人間離れした超人バンドだった。
あまりの圧巻っぷりに、僕は当時、友人と笑い転げてしまったくらい!
テンポを表す数値として、BPMというものがある。
1分間当たりの拍数を数値で表したもので、もっとシンプルに説明すると、「1分間に何回心臓が動くか」ということ。
Dragonforceは、この曲で、『bpm=400』を叩き出している!
もうアホということが理解してもらえるだろう。
そうそう、これまた余談だが、このバンドも、日本の人気ヴァラエティ番組と関わりがある。
その番組とは、“月曜から夜ふかし”。
詳しくは、各自調べてみてください!(説明すると長くなっちゃうんで汗)
③Nile “Black Seeds Of Vengeance”
Nile - Black Seeds Of Vengeance (HD)
Dragonforceはまだメロディーがしっかりとあり、ポジティヴなフィーリングがあった。
では同じ『全員が超絶バンド』でも、そのスピードを『威圧』的に捉え、暴虐さ・恐ろしさ・過激さの方向に振り切ったならば、どんな恐ろしい音になるのか。
デスメタルバンド、Nileを紹介しよう。
名前はNileだが、アメリカ出身。エジプト的なメロディーとデスメタルを融合させ、またエジプトの歴史や文化を歌詞に取り入れたバンだド。
このライヴビデオの強烈さ、先ほどのDragonforceとは180度異なるタイプのエクストリームミュージックに、全くこの手の世界を知ない人は、ぶっ飛ぶこと間違いない。
こういったものが、へヴィメタルにおけるウルトラC級の技である。
見事に演奏するミュージシャンは、アスリートの如くヒーローとなり、我々メタルキッズは、目を丸くして演奏に釘付けになり、興奮する。
普段ポップスばかり聴く人には意外かもしれないが、ライヴ中、ギターソロコーナーのみならず、ドラムソロ、キーボードソロコーナーを設けるメタルバンドもいるほど。
メタルを知らない人でも、スポーツの超人技と思いつつ、これら3つの映像を観てもらうと、なんとなくイメージしてもらえると思う。
これら3曲は、数あるメタル史に光る超絶技巧の中のほんの一部なので、興味を持ってくれた方は是非、ネットで検索してほしい。
メロディックなバンドから激しいバンドまで、世界中のいろんなタイプの超絶技巧が聴けるだろう。
そして、本題。
超絶技巧に興味を持った方には是非、今日紹介するこのバンドも楽しんでもらえること間違いなし!
名古屋のDOWNFALL。
彼らについては、次の記事、【音楽界のアスリート、DOWNFALL:ウルトラC満載の音楽世界】へ!
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【HELLHOUND:後篇~純真が巻き起こす、へヴィメタルへの愛と仲間の輪~】
『あの当時の僕』と切り出したが、僕が初めてHELLHOUNDを観たのは、23歳の頃だ。
そう、ちょうど彼らの4枚目、
The Oath Of Allegiance To The Kings Of Heavy Metal (鋼鉄の軍団)
の新譜リリース記念ギグ、Long Live The Loud Vol.8の会場で見かけた若者たちと同じような世代。
HELLHOUNDのショーが幕を閉じ、満足感を胸に帰宅しようと出口を向いた時、僕が初めてこのバンドを観た頃と同じような年代の、若者を見つけた。
笑顔で高揚感に満ちたその表情を見ていると、7年前の自分を思い出した。
7年前。正確に言うと、2010年12月。フォークメタルバンド、BELLFASTの1stアルバムリリース記念ライヴだった。
メインアクトBELLFASTの前に2バンド。Scarlet GardenとHELLHOUNDだった。
あの夜は、HELLHOUND初体験だけでなく、ライヴハウス初体験、インディーズの世界に足を踏み入れることが初めてだった。
ライヴハウスへのチケットの取り方も分からず、ぴあで探した。
だから、本当に緊張した。会場の空気感も分からないし、もちろん知り合いなんていない。もの凄い緊張の中、一人で会場へ向かった。
トップバッターのScarlet Gardenによる超絶メロディックデスメタルで、緊張が少しずつほぐれた中、登場したのは、HELLHOUND。
ティアドロップの黒いサングラス、メタルバンドのパッチを貼り付けたベストに黒シャツ・黒パンツと決めたユニフォーム。
「雑誌で観た、海外のメタルバンド、80年代のあの、へヴィメタルの世界や」
見事に揃ったフォーメーション。キャッチ―なリフ。覚えやすいコーラス。
一聴したら耳から離れないメロディーを持った曲。ハイトーンにスピード感溢れるギターソロと、へヴィメタルの全てが入り、そして本当に楽しい空間を創り上げるバンドに感動。
「俺らのことを知らなくても大丈夫。“メタル”と一緒に叫んどけば、楽しめるから!」
とのMCの通り、気づけば拳を上げ、コーラスに参加。
HELLHOUNDというバンドにより、肩の力が抜け、純粋にこの空間を楽しみ、気づけば、緊張なんてどこかえ消え去っていた。
純粋なエンターテイナー、HELLHOUNDの参上、であった。
二度と忘れることの無い、強烈なインパクトを僕の脳裏に深く、深く刻み込んだ。
HELLHOUNDの楽しみ方のMCを述べたが、本当に彼らは
「メタル!メタル!」と何度も叫ぶ。
1stアルバム” 鋼鉄のいけにえ”には、126回も「メタル」と歌詞にぶち込まれていることが国内外でも話題になり、欧州盤がリリース!
本場ドイツのメタルフェス『KEEP IT TRUE』から招待され、2ndアルバム” METAL FIRE FROM HELL / 地獄のメタル・ファイアー”をリリース。
その後、そのフェスへ参戦、見事なショーをやってのけた。
(参照:http://www.truemetalfan.org/KITXI.htm)
海外、本場ドイツでの雄姿は、DVD” LIVE IN GERMANY / 鋼鉄侍独逸之陣 (ライヴ・イン・ジャーマニー)”となり、日本のファンにも届けられた。
Live In Germany(ライウ゛・イン・シ゛ャーマニー) / 鋼鉄侍独逸之陣
- アーティスト: HELLHOUND
- 出版社/メーカー: Black-listed Records
- 発売日: 2010/05/05
- メディア: DVD Audio
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その後、2ndアルバムは欧州・北米でもリリース。
本物のへヴィメタル愛、ピュアな心が、初期から、日本中のみならず、世界にも浸透。
その力は、レコード会社やプロモーターを魅了し、その魅力を欧州の、北米のメタラーに伝えたいと思わせるほどであったと示す事実である。
2008年ドイツの『KEEP IT TRUE』に出場した映像がこちら!
HELLHOUND - Rock like Hell (live 2008)
次にHELLHOUNDを観たのは、2012年5月。北海道のベテラン、MAVERICKの2ndアルバム”NATURAL BORN STEEL”リリースツアー。
当時のこともしっかり覚えている。
ライヴハウスの入り口側での面々がいつものユニフォームに身を包んで集まっていた。
気軽に声をかけ、ショーの素晴らしさを一言伝えればよかったのだが、4人が放つオーラに僕は緊張し、静かにその場を立ち去った。
ライヴハウスとは、ファンと演者の距離が非常に近く、親密になり易く、一体感が生まれ易い場で、僕も何人かバンドマンの方々と話しているが、この夜、そうすることはできなかった。
それはなぜか?
4人が、ヒーローのように思えたから。
仮面ライダーやゴレンジャーといった、人が変身し、ユニフォームに身を包み、パワフルになったヒーローだ、と感じたから。
仮面ライダーのような最強の、スーパーヒーローを前にすると、畏れ多くなって話しかけられないように、僕は話しかけられなかった。
それからも僕の中にはHELLHOUNDが強く生き続けた。
しかし、なかなかショーに行けず、SNSで活動を追うばかりであったが、今回、やっと4枚目のアルバムリリースを記念したショーに行けた。
久々にHELLHOUNDを観て、純粋なメタル愛に僕は日頃のストレスも苦しみも問題も忘れ、ただただ楽しく、僕の心は癒され、浄化され、HELLOUNDに持っていかれた。
先ほども述べた、この夜のショーに来ていた20代のキッズたちが、今後もHELLHOUNDのライヴに足を運ぶことを願いたい。
ショーを振り返ったところで、今回のブログの大事なポイントである『純粋』という言葉に立ち返ってみよう。
彼らのショーには何度も「メタル!」と叫ぶ場面があるのと同時に、僕の文章には何度も「純粋、ピュア、真っ直ぐ、純真」なんていう言葉を散りばめた。
改めて、「純粋」という言葉の意味を調べると、こうある。
1.まじりけのないこと。雑多なものがまじってないこと。
2.邪念や私欲がないこと。
3.そのことだけを一途に行うこと
1.まさにHELLHOUND。
2.ポーザー(恰好ばかりで実質を伴わない者)を好まぬ姿勢、へヴィメタルを真っ直ぐ愛し、その愛を私欲ではなく、皆と分かち合うその姿勢、まさにHELLHOUND。
3.これもまたHELLHOUND。そう、HELLHOUNDとは、純粋なヘヴィメタルそのもの!
しかし、この純粋、ピュアという心は、真っ直ぐで純真であるが、そうであればあるほど、難しい面もある。
屈強たる音楽、へヴィメタルを心に生きるも、ピュアとは表裏一体の繊細な心ということも忘れてはならない。
この白黒はっきりせず、グレーに染まった世の中。
様々な私利私欲がぶつかり合い、不条理だらけ、正義=成功とも限らぬ世の中。
正しい者ばかりが生き残るとは限らないこの世の中。
ピュアな心の持ち主には、なかなか生き難いのが、現代社会の姿である。
これを書いている僕自身、友人や先輩、上司、家族など近しい人から、そういうタイプだと言われることがよくある。
僕自身、生きていく上で難しいと思うことも多いし、悩みも問題も尽きない。
だから、HELLHOUNDのライヴ、音楽、インタビューなどに触れ、「純粋だな」と思う度に、
「ここまで辿り着くまでに、『乗り越える壁』がいくつもあったのかな」と頭を過った。
この性格は、ありがたいとことに、好いてくれる人が多くいてくれる。仲間と言える友達もいる。
そういう良い面もあれば、一方で難しい面も多い。
納得できない問題、人、言動に出くわしたり、そこに一言言いたくてもいろんなことを考えると難しかったり。
人との関係を考え、強く言えなかったり、人に気を遣い過ぎたり、自分のことも相談できず、自分の内に仕舞い込んだり。
この世の中、社会を生きていくにはちょっと困難な時もある。
多くの人がそう感じていると思うが、素直な人、純粋な人って、なかなか打開策を見付け難かったり、生き抜く術を身に付けるのが下手だったりする。
僕も学業を終え、世に出て、約10年。
それまで白黒で勝ち上がれた学業とは異なり、グレーだらけの世界で悩む日々。
不条理や人間関係など、壁に今もぶち当たる日々を過ごしている。
そんな時、僕はいつもへヴィメタルを武器にしている。
へヴィメタルを聴き、「俺は強いんだ」と気持ちを整え、心をメタルハートに変身させ、立ち向かう。
武器は、マイク、ギター、ベース、ドラムス、キーボード。まさに、このアルバムジャケットのように…
幸いなことに家族や友人はいるが、結局、厳しい仕事や人生の問題と向き合い、乗り越えるのは自分自身。
己が強くないといけない。
己が立ち、走り、乗り越えていかないといけない。
そんな僕の心の支えは、へヴィメタル。
へヴィメタルというガソリンを耳から注入し、全身に駆け巡らせる。
そして、僕は最強になる。
そんな僕の気持ちを代弁してくれている曲が、HELLHOUNDによる、”Kill With Metal/メタルで殺れ!“である。
Crossfire氏が全曲紹介しているHELLHOUNDのフライヤーには、こうある
この曲は、俺自身が精神的に落ち込んでいるときに作ったんだ。
自分には何の価値もなければ居場所も無い、そんな気持ちで眠れない夜に色々な音楽を漁っていて、BEHIMOTHの「THE SATANIST」ってアルバムに出会ったんだ。
そこから一時期、DEATH/BLACK METALをよく聴いていて、更にVADERの”GO TO HELL”って曲に出会った。
このストレートなタイトルに「身も蓋もねえなあ」と思ったんだけどさ、ここまでガツーンといけると、逆に清々しい気持ちになれたんだ。
これまでの人生で、自分の中に何が残っているかって考えたら、それはHEAVY METALであって、それを武器に世の中の嫌なコトと向き合っていくんだなって思ってね。
出来るならHELLHOUNDを聴いてくれてる人達にも、何か武器となるモノを贈れたらって想いから作ったんだ。
まさに僕のへヴィメタルに対する姿勢そのものであると感じたのと同時に、この曲が出来上がった背景を知ると、Crossfire氏は本当に純粋な人なのだなと感じた。
世の中、生きていて落ち込む、壁にぶち当たりもがく、自分が信じられなくなる…。
これは、真っ直ぐな心を持って、体制的な何かにぶつかったとき、何か大きいものに、どうしようもない社会にぶつかったときに感じる気持ち。
本当にピュアな人だと思う。
しかしここで負けず、武器を見出し、立ち向かうと心に決めた。
武器こそ、へヴィメタルであり、その武器を手に、立ち向かう者こそ、「メタルウォリアー」だろう。
Crossfire氏のMCから、その一撃必殺曲、”Kill With Metal/メタルで殺れ!“を。
HELLHOUNDは、3rdアルバム” LET METAL RULU THE WORLD / レット・メタル・ルール・ザ・ワールド”をリリースし、2時間半にも及ぶ熱演のワンマンを成功させた後、2013年に活動を休止したのだ。
その真意を僕は知らない。
僕は一ファンであり、雑誌やSNSで好きなバンドを追いかけていただけだが、そのピュアな心に何かあったのかなと感じた。
この時、助けの手を差し伸べたのは、バンドメイト、2代目ベーシスト、Blackwind氏であった。
彼の夢は、世界最大のメタルフェス、『Wacken Open Air』に出場すること。
1990年にスタートして以降、毎年夏にドイツの田舎町で開催されるフェスで、今や、世界中から何万ものメタルヘッドが集うヘヴィメタルの祭典である。
そのフェスには、2004年よりユニークな大会が始まった。
次世代のHR/HMバンドを応援するW:O:A Metal Battle。
各国の予選を勝ち抜いたバンドが出場し、20分程度のライヴを披露し、優勝者には賞金や来年度メインステージでの演奏権獲得などが待っている。
2014年度より、日本も参加することになった。
ライヴハウスシーンで名を馳せた実力バンドが多数応募、1次審査を通った6~8バンドが都内のライヴハウスで行われる決勝ラウンドに進出し、プレイ。
厳正なる審査を経て、日の丸を背負う代表が決まる。
海外のメタルフェス、それも本場ドイツの世界最大のフェス。
簡単に出られるものではないが、その出場権を勝ち取るチャンスがある!
Balckwind氏はCrossfire氏を説得し、応募したところ、見事に予選を通過し、決勝ラウンドへ。
その決勝戦の場が、約1年の活動休止後初のライヴというとんでもないもの。
何とも厳しい状況ではあったが、なんと、HELLHOUNDは見事に渾身のショーを披露し、オーディエンスの心と審査員の心をしっかりと掴み、2014年、Wackenへの切符を勝ち取ったのだ。
Blackwind氏のへヴィメタルに対する一途な想いがバンドを押し上げ、バンドのへヴィメタル愛が詰まった曲が予選を通過。
決勝ラウンドでもその愛、純真が観客を魅了し、審査員も認める結果に。
活動休止していたバンドの復帰戦で勝利…。
見事なまでのドラマであり、事件であるが、これも、長年活動してきたキャリア、そして、へヴィメタル愛の結晶である楽曲群が成せる業。
つまり奇跡ではなく、バンド本来の実力以外の何物ではない。
(参照:https://www.wacken.com/de/festivalinfo/history/woa-2014/billing-20140/bands-20140/hellhound-2014/)
バンドは、ドイツへ向かう。その想いは、世界に、世界中のメタルヘッドに通じたのか…
(参照:https://youngguitar.jp/201501/live-report/25500)
2018年7月14日(土)、吉祥寺クレシェンドで開催された、HELLHOUND企画、「LONG LIVE THE LOUD」。
実はこの企画、この記事を執筆する為の調査で知ったのだが、第1回目は、同会場にて2006年11月18日に開催されていたのだ。
(参照:http://news.black-listed.jp/?cid=23208)
その企画が、名を変えることなく、「LONG LIVE THE LOUD VOLUME V “ALL FOR VICTORY”」として、2015年、WACKEN OPEN AIR出場翌年に復活した。
その事実から、ドイツでの様子がどうだったか分かるだろう。
Metal Battle本戦の結果は6位と、入賞ができなかった。しかし、確実にバンドの心に魂を燃やした。
自主企画の復活。
WACKEN にて自分たちを知ってくれた海外のファンにも届けるべく、新曲をデジタル配信。
すると、BABYMETALを抑え、Amazonランキング堂々の1位を獲得。ドラムスのメンバーチェンジを経て、アルバム制作に挑む。
このアルバムを作る上で、Crossfire氏は、心の旅に出たそうだ。
もう一度、自分が好きな音楽、書くべき曲を求め、様々なレコードを渡り歩いたのだろう。アルバムのアートワークからそう感じる。
純粋な心で音楽に触れ、魂揺さぶられる珠玉の11曲を産み出した。
「日本で唯一の、HR/HM専門誌"BURRN!"の2018年8月号掲載の、HELLHOUNDインタビューで」インタビューで、Crossfire氏はこうも語っていた。
「俺たちは工業製品みたいに音楽を作らない」
そう、ただただ売れる音楽を、商売として生み出すバンドではない。
Crossfire氏自身に流れる空気が、環境が、心に良い力が流れ、意を決した時、そしてメンバー各人の周囲にもいいムードが漂った時、素晴らしい楽曲が生み出される。
リーダーの心に火が付き、それが伝わり、バンドが純粋に音楽に開眼した時、生まれた楽曲たち。
へヴィメタルをただひたすら純粋に愛してきたCrossfire氏。そんなリーダーを、そしてヘヴィメタルを愛するバンドメイト。
そんなバンドを、へヴィメタルを愛するライヴハウスに集いしメタルキッズ。
そして、海外でHELLHOUNDを目撃し、または一聴し、HELLHOUNDの虜になった、メタルを愛する国内外のキッズ…
このように、世の中に投げ込まれたCrossfire氏のピュアな心は優しくゆっくりと波を打ち、彼の周りの空気にメタルという音の波を作り、近い人から遠い人へ、バンドメイトからバンド仲間、ライヴハウスキッズ、国境を越えた遠くにいるメタルヘッドへと伝わっていく。
へヴィメタルを愛するというただ一つの共通点があるところなら、どこまでも、メタルの波紋は広がり、波及していく。
活動休止からの復活、世界最大のへヴィメタルの祭典での経験、自主企画の復活。
バンドとして苦楽を経験した後の作品がどんなものか。
そんな思いを頭に、是非、新譜は曲だけでなく、歌詞にも注目して、しっかり味わってほしい。
アルバムを聴く度に、僕は何度もガッツポーズをしている。
HELLHOUNDは他のバンドと違い、SNSや専用LINEでも大いに楽しませてくれる。
メンバーがドライブ中に聴くアルバム紹介や、イベントに参加するバンドそれぞれへのインタビュー(結成秘話や影響を受けたアルバム紹介)など。
新譜リリースまでの日々、次いで、イベント本番までの日々までも、お客さんを楽しませる仕掛けを多数用意。
バンドのエンターテイメント精神、そのアイデアの数々、実行力には、いつも、楽しませてもらっている。
平日のムカつく日々の中、楽しいイベントを届けてくれるバンドには感謝しかない。
きっと、新譜リリースツアー、名古屋・大阪もきっと成功させていただろう。
面白いのはその次、真夏の音楽イベントに出場するのだが、彼らが登場する日は、数多いる出場バンドの中で、HELLHOUNDが唯一のへヴィメタルバンドだという。
完全アウェイな地に挑むのだが、果たして、先人から得たヘヴィメタルという素晴らしい生き甲斐を、一音楽ファンのオーディエンスを巻き込むことができるのか?
彼らのへヴィメタルマジックは本物。
へヴィメタルがどんなにかっこいいものか、どんなに勇気を得られるものなのか、彼らはきっと伝えることができるはず。
「なんで、お前にそんなこと言える自信があるねんって?」
この映像を最後にお届けしよう。
HELLHOUNDが、Wacken Open AirでのMetal Battle本戦にて演奏した映像だ。
最後に演奏された曲、その名も”Metal Warrior“。
オーディエンスの様子を見れば、彼らのピュアなヘヴィメタル愛が、世界をも支配しているこが分かる。
HELLHOUND - Metal Warrior 2016
これはコンテスト。各国を代表するメタルバンドが闘うコンテスト。
しかしHELLHOUNDの演奏が終わると、
“We Want More”
アンコールする声援、拍手が鳴りやまなかったらしい。
そして、その4年後のWacken、SNSでこんな記事があった。
バックステージで、日本だとわかるとメタルメタールのバンドか!」って言われました。
ヘルハウンドは聖地にがっつり爪痕をのこしていましたw
純粋な心の波紋は、どこまでも、どこまでも、広がり、キッズの心を浄化し、火をつける。
そこにヘヴィメタルキッズがいる限り、どこまでも、宇宙までも、広がっていくだろう。
(参照:https://youngguitar.jp/201501/live-report/25500)
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【HELLHOUND:前篇~純真が巻き起こす、へヴィメタルという名の魔法~】
静かな湖に石を投げいれたら、波が静かに広がる。
水面の葉っぱは揺らめき、水中に生息する生き物や植物は喜び、湖の縁まで、石の力は伝わっていく。
静かな湖に対し、固い石、人工ではなく自然が生んだ強固な石は脅威だろう。
この石がただただ恐ろしいものではなく、魅力的で、純粋で、感動を生むものだったなら…
僕のHELLHOUNDのイメージ、魅力はこれ!
自宅のリビング。
もうすぐ1歳になろうとする愛息子・愛娘が、ある日突然、つかまり立ちをした。
ソファーにつかまり、立とうとするも転び、立とうとするも崩れ落ち、しかし負けずにソファーにと対峙し、とうとうつかまり立ちに成功。
その姿に喜ぶ父、感動して泣く母、すぐさま連絡して感動を両親、兄弟と分かち合う。
純粋な心で戦う姿がもたらした感動が波及していく。
子供が運動会で懸命に走る姿も同様。
1位になれば、その感動はクラスメートに、その一人一人のご家族にも波及。
高校野球はどうだ。
汗水垂らして、学業と両立させようと努力する日々を過ごす高校生活。
朝練、学業、夕方のクラブ活動は暗くなっても照明を照らして泥だらけになって頑張る。
その後に勉強だ。
そして、地方予選に挑み、勝負に出る…
甲子園出場を決めようが決めまいが、努力をする者の闘争心、また背負い込む思いは、感動を生む。
その感動は、仲間、監督、高校、その家族、新聞記事やテレビ、数々のメディアに取り上げられれば、もっともっと広がる。
なぜ、高校球児たちはそこまで辛い生活を送りながら、頑張れるのか。
答えは簡単。野球が好きだから。
好きなものを極めたい、勝利を掴みたい。できれば、学生たる者学業も疎かにせず…
純粋なその心が努力も可能にするし、何事にも恐れず、戦える。
この純粋な心が感動を巻き起こし、パワーを、ポジティヴな心を与える。
(引用:https://www.metal-archives.com/bands/Hellhound/30535)
枕が長くなってしまったが、今回、紹介するバンドHELLHOUNDに触れる度、僕は、本当に純粋な心、澄み切った心を持ったバンドだと感じてきた。
純真は、上述の通り、とてつもない力をもたらす。
しかし一方で、この不条理極まりない、グレーばかりな世の中に、繊細な心で対峙するとなかなか難しい場面が多いのも事実。
表裏一体なその繊細なバランスに成り立っていること。
これもまた魅力であり、バンドのドラマをより一層強くする。そう強く信じている。
実際、僕自身にも似ているところがあって、そんなバンドの話に触れ、彼らが生み出す爆発の恐ろしさに感動している。
2002年、Crossfire (Vo./G.) を中心に結成されたバンドは、2018年6月、6年6か月振りに4枚目のアルバムをリリース。
そして、自身が毎年夏に開催する企画”LONG LIVE THE LOUD”にて、アルバムリリース東名阪ツアーの幕を開けた。
(引用:https://twitter.com/hellhoundmetal/status/1011566794383872005)
“THE OATH OF ALLEGIANCE TO THE KINGS OF HEAVY METAL/鋼鉄の軍団”という4枚目のアルバムタイトルが表わすように、
彼らの一挙手一投足には『へヴィメタルへの純粋な愛、敬意の念』に満ち溢れている。
ツアー初日の東京は、見事なまでの、へヴィメタル愛溢れるエンターテイメントショーであった。
2018年7月14日。
場所は、東京、吉祥寺。
この日は、主催者であり主役のHELLHOUNDの前に3バンド。
各バンドが素晴らしい演奏でイベントを盛り上げていく。
Lipstick、ZERO FIGHTERの熱演に続く、3バンド目の兀突骨が演奏開始。
「川越の残虐王」と呼ばれ、国内外で活躍するこのバンドに前々から興味があったが、なかなかきっかけがなく、この夜が初見であった。
エクストリームメタルにスラップベース、武士のような佇まいと異様な世界観に、どんなものか楽しみにしていた僕は、ステージ下手前方に陣取った。
また近い将来書くであろう彼らの記事にてその姿を描写するが、圧倒的画力を持ったバンドに僕は完全に陶酔していた。
しかし、彼らの演奏にクレイジーになっていたのは、僕だけではない。
本日のメインアクト、HELLHOUNDの面々もキッズのようにステージを見つめていた!
彼らは次に演奏する準備にとステージ下手(しもて)に集まってきたのだが、Crossfire氏は首を突き出し、食い入るように、兀突骨の演奏に見入っていた。
Blackwind氏(Ba.)とLucifer’s Heritage氏(Gt.)は腕組みし、ステージを静かに見つめる。
僕からは彼らの背中しか見えてないが、きっと表情を想像するに、
「たまげたな、この演奏!」
「今回呼んでよかった。この熱きエクストリームメタル愛に満ちた演奏。素晴らしい!」
「しかし、俺たちも負けないからな!」
という顔をされていたはず。
HELLHOUNDの面々は本当に純粋。
大きな身体をした、キッズ。
子供の頃大好きだったヘヴィメタルへの愛を、ただ真っ直ぐな好きという心を今も持っている。
さて、兀突骨も終わり、転換。クラシックメタルが会場内を流れる。
きっと場内にいるお客さんも皆知るであろう、ベタな選曲、
まさに名曲の数々に皆を興奮させ、HELLHOUNDへの期待を高めていく。
場内、暗転。
ティンパニのリズムにより、ダイナミックなドラマを期待させるアルバム1曲目がもちろん、今宵のショーのオープニングSE。
心に体に、一つずつ点火していくかの如し。我々の心奥底に眠る闘志、へヴィメタルを呼び起こす。
初めて聴いた時、香港にある大手映画会社のジングルを思い出した。
ブルース・リーやジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウにジェット・リーらを輩出した会社。
小学生の頃金曜ロードショーでよくジャッキー映画を観ていたから、ふと思い出した。
SEのリズムによる場内の熱気が沸き上がってきたところで、バンドが登場。
歓声と共にステージに迎え入れられたメンバーは、それぞれのポジションにしっかりと立ち、客席に背を向け、時を待つ。
ドラムスのカウントと共に、”The Oath Of Allegiance To The Kings Of Heavy Metal/鋼鉄の忠誠“へ。
パワー溢れるネスをスピード良く切り込んで切る攻撃力満点な一曲で、場内のボルテージは最高潮に。
漢気溢れるコーラスもフォーメーションも、そして、早口言葉のようなサビで、我々の心を鷲掴み。
続くは、アルバム通り、“Metal Nation/鋼鉄の軍団”。
ガラッと変わったミドルテンポナンバーであるも、へヴィメタルのお決まりと言っていい一発。
どっしりと地に足を付け、仲間と息が完璧に合ったリズムにコーラス、胸を張り堂々と歩く一団の姿が目に浮かぶ一曲は、まさに邦題通り、『鋼鉄の軍団』。
実は、このアルバムから新布陣となった。ドラムスの変更である。
そのお披露目と言わんばかりに、先行して紹介されたのが、次の曲、“Speed Metal Hell/スピードメタル・ヘル”。
その新メンバー、Mountain Kingのドラムソロから始まるこの一曲は、へヴィメタルファンならニンマリとしてしまうMVに仕上げっているが、ライヴでも本当に気持ち良い。
各メンバーのソロが配され、
HELLHOUNDの旨み成分満点だからだ。
“Interlude/哀愁のウォリアー”の曲名通り、哀しみに満ちたメロディーのインストを披露。
次は悲哀のヒーローの叫びと言わんばかりの深みあるイントロから始まる、”Requiem For Warrior/戦士のレクイエム”へと続く。
この曲の、哀愁を内に秘め、歯を食いしばり戦おうとするようなイメージのメロディーがたまらなく好きだ。
その後も、新作からの楽曲を中心にどんどんショーは進んでいく。
Crossfire氏の声は、まさにダイアモンドの王者のような声。
光り輝き、鋭利過ぎて殺傷力を感じさせるハイトーンを轟かせ、MCでも観客の心をバッチリ掴む。
新加入のMountain Kingは、緩急ついた、ヴァラエティ豊かな新曲に対し、それぞれの曲に合ったリズムパターンを見事に作り出している。
ライヴではより一層ラウドに聴こえ、新曲がリズムの面でも面白いアルバムだと証明。
Lucifer’s Heritageはいつものように涼しい顔でソロを決めまくる。
一切、ぶれること無く、堅実に役割を果たしていく。
今回バンドメンバーで一番ビックリであったのは、ベースのBlackwind。
サウスポーのベーシストの為、フォーメーションを組めば見事で、かなりアクションも多く、動き回り、ステージアクションに活気があるのはこれまでも感じていた。
今回僕は下手の最前、つまりベースの目の前に陣取った為、そのプレイを終始見ていたのだが、彼の指はベースのネック上を縦横無尽に動き回り、かなり弾きまくっていることが分かった。
楽曲のボトムをキープしつつも、時にツボを押さえた『弾きまくり』を差し込み、曲にパワーを、観る者に「ワオ!」を与えている。
最近ベースが大好きな僕は思わず、心の中でガッツポーズし、「ベースヒーローがいた!」と深く頷いた。
過去作品より2曲で本編の幕を閉じ、すぐさまアンコールかと思いきや、マイクスタンドが多数セット。
何が始まるのかと期待に胸を熱くしていると、続々と可愛い女性が…
そう、新譜をヴァラエティ豊かな一枚に仕立てた要因の一つでもある、パーティーソング、
“Heavy Metal Magic/ヘビーメタル・マジック”がここで披露される。
それも今宵はリリースパーティー。やれることはやり切り、自身を、そして、お客さん皆を楽しませる精神のバンド。
アルバム同様、女性コーラスを入れ、徹底再現。そう、メタルってただ激しい、爆音…が全てではない。
こんな、男も女も皆へヴィメタルという音楽に惚れ、楽しくコーラスし、笑顔でダンスする。なんて一曲もある。
へヴィメタルとは、撃や怒号だけではない、笑顔にもなれる音楽であるということも忘れてはいけない。
アンコール2曲目は、バンド初のバラード。それもピアノバラード。
へヴィメタルへの愛、想いを詞・曲に注ぎ込み、愛情込めてドラマチックに書き上げた一曲。
アルバムでもプレイした、ゲストキーボーディストのEmerald Beastが登場し、感涙必至の名曲を完全再現。
荘厳なピアノから始まり、切ないギターメロディーから成るバラードは、
一転、意を決した男が涙を振り絞り、明日へ向かい走り出すパワーメタルへと変貌し、
最後には、純粋なへヴィメタルへの愛情が溢れ出す。
ピュア過ぎる愛が故、溢れんばかりの気持ちが、バンドを更なる高みへ…。
ハイトーン、ドラム・ベースのスピードリズムにギターソロへと昇華させる。
お決まりのアンセム、”Metal Warrior”で締めるも、完全にお客さん全員をへヴィメタルという魔法で虜にした結果、場内から再登場を求める声は止まず、2度目のアンコール。
”Mr. Heavy Metal”という我々皆のことを歌った一曲で締めた。
振り返り、場内を見渡せば、皆、笑顔。
何より、いつもは見ないような若いお客さんも多かった。
31歳の僕もまだ若い方だとは思うが、もっともっと若い、20代前半と思しき観客がそこにいた。
きっと彼らも、HELLHOUNDと初めて出逢ったあの当時の僕のように、この夜のステージが、ずっと心に残り、
「へヴィメタルってかっこいい!」
「HELLHOUNDって楽しい!」
という思いが消えず、
またHELLHOUNDのライヴに、へヴィメタルのショーに、ライヴハウスに、足を運んでくれることを願いたい。
<次回予告>
「HELLHOUNDと初めて出逢った『あの当時の僕』のように…」について、
そして、バンドの純真についてもう少し深く感じた僕なりの物語を、お送りする。
本当は一発強力なものを書き上げたかったけれど、熱量を込めて書くと文章量が余りにも多くなってしまう。
次回も濃い内容でお送りするので、お楽しみに!
#hellhound #ヘルハウンド #heavymetal #へヴィメタル #blacklistedrecord #theoathofallegiancetothekingsofheavymetal #鋼鉄の軍団 #wackenmetalbattle #woametalbattle #metalbattle #metalbattlejapan #音楽ライター監督
【Crocodile Bambie~地球との一日、浜辺にて~】
1日は瞬く間に過ぎる。
「1日=24時間」だけれども、会社へ行き、仕事をしていたら、一瞬で過ぎ去り、疲労だけが残る。
年齢を重ねるにつれて、1日、1週間、1か月、1年と、時の過ぎゆくスピードがどんどん加速していく。
そんな緊張した心身を緩める為に、癒しを求めて旅に出たくなる。
ゴールデンウィークや夏休み、正月になれば、ハワイやグアム、バリ、モルディヴにニューカレドニアなど南国のビーチ、リゾート地へ出かけ、
広がる青空と大海原に身を委ね、癒されに行く人が多いことをみると、同じように感じているのは僕だけではないだろう。
都会は非常に快適で、何でも備わっていて、便利だ。
けれども、人が本当に心地良いと感じる場所は、自然であり、オーガニックな環境なんじゃないかな。
ビーチで過ごす1日を夢見るも、お金や時間、家庭。いろんな事情でそう簡単に旅行には行けないもの。
そんなあなたに、今日のブログをお届けしたい。
「音楽で旅ができること」
そして、
「仲間と一緒に自然と戯れる雰囲気を味わえる音楽があること」
を紹介しよう。
続きを読む【JASONSの蓋世不抜~第三章:四度目の福生にて覚醒篇~】
2018年2月24日。初関東襲来から3年と8か月が経った。
2018年初のJASONS関東は、福生。SHIT LISTという、初福生と同じイベント。
この日が発表されたから、僕はどれほど待ち焦がれていたか。
この地でのJASONSということに加えて、溜まりに溜まったプライベートでの怒りやストレス、疲労のため、へヴィメタルのライヴを欲しており、
僕は本当にこのイベントを心待ちにしていた。
とは言いつつも、福生へ到着してもすぐに会場へは向かわなかった。
この土地に興味があったからだ。ここには何かがあると感じていた。
ビールを片手に夜の福生を散歩。
福生には横田基地があり、アメリカ人の方が非常に多い。そう聞くと非常に危険な町と思われがちだが、決してそんなことは無かった。
アメリカのようなクラブやバー、ウッドデッキのあるレストランなどが並ぶも、昭和の日本のような賑やかなバーやクラブ、呑み屋も立ち並ぶ。
海外へは仕事で何度か行ったことあるが、福生の空気は、海外で感じる解放感を少し持っていた。
特にLA。
ハリウッドにある伝説のロックバー、”Rainbow Bar & Grill”へ行った時、ワクワクしながら夜の街を歩いていた。
そのバーがある通りは、サンセットブルバードと言い、世界的に有名なライヴハウス、タワーレコードの跡地やバー、レストラン、そして、ラーメン屋さんが並ぶ。
人種の垣根を越えた多くの観光客や地元民が歩き、食べ、呑み、笑っていた。
あの通りに流れた空気と似ていた。
行き交う日本人は若者から家族連れまで。また外国人も多数。
そして、古くからある日本の呑み屋で働くおっちゃん。
いろんな人たちが小さな福生の飲み屋街で溢れているのだが、皆、馴染んでいる。
落ち着いた土曜の夜、平日の疲れを癒す人たちの絵がここにある。
ここは、土地もそこで生きる人も、懐が深く、器がでかいのだろう。
『来る者拒まず、良いものは受け入れ、皆で楽しむ』
そんなシンプルな考えがここにある。
30~40分ほど歩き、会場に入った。ジャックダニエルとテキーラで身体と心を温める。
ステージに目を向けると、静岡のバンド、All That Groovin’のパフォーマンスがちょうど始まった頃だった。
彼らはもちろん、続くDemons、Morllyheadsも素晴らしかった。
対バンのバンド同士で盛り上げ合い、お客さんも熱く、笑顔でノッていた。
SHIT LISTとは、この福生を拠点に活動するバンド、ANTI-PRIDEが主催するイベントだ。へヴィメタルではないが、熱い、骨太なロックバンドが毎度集まる。
そういう意味では、同族で集まらない、同じ志を持つバンドと本気で対バンしたいという、JASONSにはピッタリ。
そう言えばこの時、一人で会場にいたら、ある男性から声かけてもらった。
「JASONS観に来たんですよね?」
「そうです。分かります?」
「えぇ、分かりますよ!」
顔が割れている…なんで?と思ったけれど、きっと、SHITLISTに毎度いらっしゃるお客さんかミュージシャンの方だろう。
2015年の福生Chicken Shackや2016年の野外フェスと、JASONSがプレイする時、僕は全力で走り回っていたから。印象が強かったのかな?
しかし名前も知らない僕に声をかけてくれるなんて。
同じロックを愛する熱い者ということでできる仲間意識。
えぇもんやな。
22時30分頃、JASONSは、セッティングを開始した。
メンバーに挨拶し、軽くストレッチをしながら、その様子を見守る。
軽く音合わせの後、メンバーはメイク、衣装の準備に入った
そして場内暗転。
ショーはスタート。
彼らは袖から登場しない。
後方から、観客を割って練り歩き、ステージに上がる。
「バンドもオーディエンスも皆同じ、爆音を愛する者だろ?曲を書き、演奏するからバンドの方が偉い、オーディエンスはバンドをフォローするもの…とかどうでもいい。
皆でこの場を楽しもう、皆でライヴハウスを作ろう」
という心かな。
後方のバーカウンターから現れた、JASONS。
いつもの通り僕はメンバーと抱き合い、ステージに上がった。
今夜は3代目ベーシスト、ジェイソン百十号 マークⅡが加わってから初となる東京公演。
今夜は、いつも一緒のJASONSフリークが不在だった為、
「俺1人で何としてでも会場を爆発させなあかん」と、意気込んでいた。
しかし、爆音一発。
バンドがかました瞬間にスイッチが入ったのは、僕一人では無かった。
何人もが一斉に暴れ始めた。
既にステージを終えたバンドの方々。酒を何杯も煽り、テンション激高な方々。
皆が揉みくちゃになって、暴れ出す。2人、3人と肩を組み、前へ突っ込む。どんどんモッシュは激しく、興奮の渦は高まった。
フロアは、暴れるゾーンとその周囲を囲むオーディエンスに分かれる。
通常、ゾーンの周りから観る人たちは、ただただ呆気にとられた表情で観察しているだけなのだが、この夜は違った。
皆声を出し、拳を上げ、この興奮の場を楽しんでいる。
「お前ら最高だな!けど、怪我だけはしないようにな」
ゴリさんの嬉しさと優しさを垣間見た一言の後、場内はさらに盛り上がり、男も女も、日本人も外国人も皆同じく、音楽に心酔していった。
スリーピースとは思えない音圧とスピードで攻め倒すセットリストは、初見の人でも、簡単に馴染め、楽しめるものであることも手伝い、無数の人が、JASONSに共鳴した。
ところで、他のバンドにはない、JASONSではお決まりの光景がある。
ステージの中盤、ギターを置いたゴリさんはフロアへ下り、バーカウンターへ向かいビールを買う。
この間、リズム隊は演奏を続けており、上手のマイクスタンドは空いたまま。
『ステージ上は神聖な場。上がりたくても上がれないバンドもいる。俺はただの客、そのことを忘れるな』
と胸に秘めていたのだが、
『さっきのバンドでも馴染の客がステージ上がって一緒に歌っていたし、そういうのが許されるイベントなのかな』
と思っていたら身体が自然と動き、僕はステージに立っていた。
見下ろすと、フロア前方の人たちが僕を煽る。
『イケる!』
僕はマイクを掴み、煽り始めた。
両手を力強く振り上げ、叫んだ。
『ステージから客席ってけっこう見えへんのか、暗いわ…やっぱヴォーカリストの体力って凄い、全然声出-へん…
しかし全力でやったるからな!
ゴリさんが戻ってくるまで、会場のこの熱量を落とさせんからな!』
ヘッドバンギングし、声を出し続けた。
ゴリさんはステージに戻ったら、まずはビール瓶を僕の口に持っていき、流し込んでくれた。
そしてフロアへ戻る。
バンドメンバー、客何人かでビールを回し呑み、演奏再開。
もちろん、その後もフロアの火は燃え盛った。
最後の曲。ゴリさんの指示で客電がついた。
彼はマイクスタンドを携え、ステージに下りた。
フロアの中央でその曲の後半を、歌い、ギターを掻き鳴らした。
これまでも同じようなアクションはあったが、ここまで熱く、歌もギターソロもやり切ったのは初めてではないかな?
僕は彼の周りをサークルし、横で共に歌い、ステージに上がって、ベースの横でエアギターに没頭、ドラムの前でヘッドバンギングと、心のままに暴れ倒した。
もちろん、僕だけではない。
多くの人が暴れ回り、それぞれのやり方で盛り上げ、性別も国籍も関係なく、楽しんだ。
終わってから、ゴリさんと抱き合う。
「最高」
とお互い言い合った時、約4年間の歩みを思い出し、グッと来た。
JASONSが、デカくなった。
僕は、「音楽は耳で観る映画」とし、音楽から感じるイメージを文章にするライター。
初音源であるEP「DxOxTxD」では、大自然の奥地に生き続けるJASONSという種族が見え、彼らの暴走、踊り、生き様をライナーに書き、へヴィメタルが生まれる瞬間を説いた。
(参照:http://www.jungle.ne.jp/artistvoice_post/av-201-8/)
続く、1stアルバム「Inferno」では、そのバンドの姿をもっと掘り下げ、彼らの波動(=グルーヴ)を感じ、闘争心と仲間意識をライナーに書いた。
(参照:http://www.jungle.ne.jp/artistvoice_post/av-213-2/)
その後のライヴレポートはまた後日、このブログでも紹介すると思うが、僕の物語はこうだ。
「自然から飛び出したJASONSは、街に出た。名古屋、東京といった大都市で暴れ回り、一人また一人と仲間にしては、皆の心に闘争心を生み、社会と闘わせる」
しかしこの後、どんな音源を出すのだろう、僕はどんな物語を書けばいいのだろう、と正直悩んでいた。もうネタが尽きるかもと思った時もあった。
しかし、僕の想像以上のことが今起こっている。
まさかこんなモンスター化するとは。
今後どれほどまでに進化するか。誰もその姿は分からないが、こうして挑戦を続けていけば、必ず、結果は出る。
福生、横浜とこれまでの土地を愛し続け、地方都市へも行脚するだろう。
そして、東京23区、日本の中心も襲う日が来れば。
そう、日本が世界に誇るモンスター、ゴジラのように…
そしてこのブログでも、せっかく物語を作ったので、今後も第四章、第五章と追いかけていこうと思う。
物語と言えども、これはルポルタージュのようなもの。
筆者の僕は引き続き、JASONSを追いかけ、作品を読み込み、現場を歩き、彼らの姿をしっかり目に、脳に焼き付け、文章に仕上げていく。
【JASONSの蓋世不抜~第二章:福生へ道場破り篇~】
2015年12月5日、JASONSは初めて、福生(ふっさ)にあるライヴハウス、Chicken Shackでショーを行った。
その夜、僕はプライベートでバタバタしており、ギリギリの到着となったのだが、会場に着いて、何かいつもと違う空気を感じ、武者震いした。
Chicken Shack は1974年から続く老舗のライヴハウス。
ドアを開けると、長いカウンターがあり、様々な酒と料理が提供されている。
ライヴハウスでは有り得ないスタイルだが、ここに多くの人が溢れ返り、皆それぞれに楽しんでいる。常連さんたちなのかな。
そこを通り抜け、石階段を2,3歩下りると、小さなフロア。横にベンチがあり、背後にはDJコーナー。木や石を配したこの会場は何だか温かい。
異国。
南国というか、アメリカというよりも中米のような、ゴージャスではないが、DIYで作られたような、カラフルな自然を感じる会場である。
この夜、JASONSは化けた。
ちょうどベーシストが、ジェイソン百十号に代わった頃。新しい3人編成になり初の東京公演。
初代ベーシストは客としてバンドと一緒に東京に来ていた。僕ともう一人のフリークは、軽く挨拶。
ショーが始まれば、僕ら3人は、全力でフロアを盛り上げた。
脱退しても仲間。JASONSファミリーの温かさが見える。
バンドはいつも通り、フロア後方から登場。ステージに上がると、フルスロットルで爆音を鳴らす。
僕ら3人は、いつも通り、「俺らが盛り上げんと」という使命感と爆音の高揚感で、小さいながらもサークルピットを作り、走った。
するとどうだ、バンドの音圧、力が観客を魅せ、一人、また一人と前へやってくる。そして、僕らと共にサークルし、走り回る。
こんな光景初めて。これを待っていた!
この夜、初めてゴリさんは曲間でマイクを取り。笑顔で観客を煽った。
その翌年。約7か月後の2016年7月10日。
福生市多摩川中央公園げんき広場という、河川敷の広い会場。太陽が燦々と照りつける日中に、野外フェスが開催された。
ここに、JASONSは呼ばれた。
この頃から“リズムタイム”は見られなくなった。
2015年に1stアルバムをリリースした為、曲という強力な武器が揃ったからだろう。
バンドのコンセプトは「ホラー」なのだが、実に太陽が似合う。
音にも、心にも、野生味溢れるグルーヴを持つからだろう。
僕はもちろん、その他数名が汗をかきながら、熱狂していた。
もうファンは2人じゃない。福生にはいる。
ラスト曲だったか、2015 年リリースの1stアルバムに収録され、PVも制作された”PREDATORZ”という曲を演奏した時、ゴリさんは僕にマイクを手渡した。
JASONS初の4人体制、専任ヴォーカルとバンド…と調子に乗ったことを言ってはいけないが、少し、歌わせてもらった。
余談だが、この時ヴォーカルがどれほど体力の必要なものか実感した。
それまで20分くらい走り回っていたせいもあるが、全然声が出ない。いくら腹に力を入れ、踏ん張っても、全然声が出ない。
ヴォーカリスト、特にエクストリーム系の人たちに尊敬の心を持った瞬間だ。
ここで、EPリリースの1年後にリリースされたアルバムから、“PREDATORZ”のPVを紹介しよう。僕が少し歌わせてもらったという曲だ。
JASONS 1st ALBUM INFERNO『PREDATORZ 』
その後もJASONSは、精力的に挑戦を続けていく。
シングル、EPの制作、オムニバスアルバムに参加、と、とにかく音源を出す。
そのほとんどが、即効性のある、速さと圧をかます楽曲で、次第にセットリストも圧とスピードで観客を制圧するスタイルへと変貌していった。
地元名古屋では、JASONS ARMYというファンベースが確立され、主催イベントも快調に進んでいるよう。
東京にも、年に2~3回は来てくれ、全力でぶつかっているのだが、お客さんのノリはもうひとつ…という感じは否めない。
ゴリさんがギターを置き、フロアへ飛び降り、客に声かけ、サークルを作るようにするも…1人、2人が混じるくらいかな。
2017年4月。確かこの時期、2度目の福生Chicken Shackでのライヴがあった。
僕は仕事の都合で泣く泣く断念せざるを得なかった。
今回、JASONSの東京進出物語を書くにあたり、この2度目の福生がどんな盛り上がりだったのか、気になって仕方がない
明日発表する第三章は、2018年1発目、東京でのライヴについて。
先に言っておくが、この夜はえげつないことになった。
約3週間経った今でも、あの夜の興奮は覚えているし、心が熱くなる。
さて、その熱気がどれほどであったか。次の章でしっかり、熱く語ろう。
【JASONSの蓋世不抜~第一章:関東殴り込み篇~】
*蓋世不抜(がいせいふばつ):
世の中を圧倒する気性や才能があり、意志が堅いこと。また世の中を圧倒する気性や才能があり、戦いに負けたことの無いこと。
(出典:http://4ji.za-yu.com/2015/01/post_1259.html)
誰にでも、人生のターニングポイントと言える場所がある。
生まれた場所。
育った街。
学生時代遊んだ繁華街。
初めて女の子とデートした映画館。
クラブに全力を注いだ高校生活最後の試合会場。
大学生の頃、遊び呆けた飲み屋街。
就職先。
そして、初めて一人暮らしをした駅…。
これらの場所を再訪すると、脳内のスクリーンには、当時の風景や思い出が映画となり、映し出される。
人生山あり谷あり。良い思い出もあれば、そうでないものもある。
だから、脳内の映画には喜劇もあれば、悲劇もある。
しかし、決して悲観してはいけない。
それぞれの場所を乗り越え、まっすぐ前を向いて歩いているあなたのことだから、どの場所も、人生においてステージアップ、レベルアップしたターニングポイントと言えるだろう。
人も生き物、バンドも生き物。
バンドにとっても、思い出の土地、ターニングポイントとなる場所がある。
JASONSにとって、きっと「福生(ふっさ)」は、数あるターニングポイントの中でも、大きな意味のある土地だろう。
2018年2月24日。この年JASONS初となる東京公演は、福生Chicken Shack。
この夜が凄まじい熱狂の渦であった為、興奮のまま翌日に書いたライヴレポートが、バンドと福生との物語として仕上がった。
何度か書き直しを行ったが、やはり語りたい物語がバンドにあり、あまりにも長い文章になった為、3日に分け発表することにした。
まずは第一章。彼らが関東の地を踏んだ頃の話から始めてみよう。
JASONSの蓋世不抜~第一章:関東殴り込み篇~
IB89という名古屋のバンドをきっかけに、ギタリストのゴリさんと知り合い、彼が率いるJASONSを追いかけるようになった。
僕が初めて観たライヴは、たぶん彼ら初の関東ライヴ。
2014年6月、横浜は関内にあるB.B. Street。同郷のRevenge.69との横浜公演。
あまりにも衝撃的過ぎたその夜のショーを、僕は今でも鮮明に覚えている。
現在も変わらぬヴォーカル兼ギターであるジェイソン一号、ドラムスのジェイソン二号に初代ベーシスト、ジェイソン三号のスリーピーススタイル。
1stEPの4曲を全披露した。
何が衝撃的って、彼らはただの音源再現はやらなかった。
「ホラー」と「メタル」をテーマにしたバンドのステージに目をやると、なんと下手(しもて)に棺桶が置いてあった。
そして3曲目だったか、なんとその棺桶からミイラが登場した。ミイラはフロアを練り歩き、僕らとサークルピット作って走り、踊りまくった。
それだけではない。ステージでも、通常のメタルバンドとは異なった演出で驚かせる。
例えば、へヴィメタルバンドのライヴには、セットリストの中盤に“アコースティックタイム”なんてコーナーを入れることがよくある。
しかしJASONSがセットリストにぶち込んできたのは、“リズムタイム”
ドラムキットの前に用意していた、タムという太鼓を一つステージ中央に設置し、ギターを背に回した一号がドラムスティックを持って、叩く。
まさか、へヴィメタルバンドでこんなことが起こるとは思ってもみなかった。
それにまだ新人バンド。
20分そこらの短い時間に主張するなら、全力で激しいメタルをかますものだが、一辺倒なショーを嫌い、世界を作ってライヴハウス内を自分たちの色で支配し、観客を魅了する。
2分ほど続いたパーカッションタイム。
僕はJASONSのリズムに乗せられ、もうバンドのグルーヴの渦に溺れていた。
この頃リリースされた初音源である1stEPは、攻撃的なスラッシュメタルと、重く遅いドゥームメタルを混ぜたもの。
ジェイソン一号の構想は明確で、メタルの世界の両極端を見事にミックスさせ、唯一無二の異色エクストリームサウンドを初期から完成させていた。
EP中盤にある、非常に重く、スローな曲は、呪術的で、民族音楽のようだった。それを視覚的に表現したスタイルが、この“リズムタイム”だった。
MCも無く、自分たちの世界を駆け抜けた。
JASONSは、客目線に立ったライヴができる数少ないバンド。客が何を求めているか、何をしたら興奮するかを理解し、表現できる。
ここで1曲。EPからのMVを紹介しよう。
今でも演奏される疾走曲“CYTOCLASIS”。
JASONS 1st SINGLE DxOxTxD『CYTOCLASIS』
関東圏のバンドではない、まだ新しいバンドなのに、その後も精力的に東京でライヴを行った。その度に参戦していたが、どうも固かった。
というのも、対バンがゴリゴリのメタル猛者たちではなく、ビジュアル系だったり、大学生っぽいバンドだったり、軽いパンクだったからだ。
JASONSと音も違えば、正直に言って申し訳ないが魂のレベルでも違っているバンドとばかり対峙していた。
「もっとゴツい、名の知れたバンドとぶつかったら、JASONSの魅力は一気に広まり、東京でもビッグになるのに…」
対バンの方々には失礼ながら、毎度こういった思いで帰宅していたのだが、それは僕のお節介に過ぎない。
だから、僕はひたすら、毎度のショーを全力で、ファンとして。フロアを盛り上げることに徹することにした。
どのライヴ会場でも光景は同じ。僕ともう1人のフリークが、フロア前方で暴れるも、他の客は数歩下がって鑑賞する。
このようなフロアの様子にも動じず、バンドは黙々と、自分たちの音を演奏する。
MCなど一切せず。
当時のことを振り返ると、これがJASONSの首謀者、ジェイソン一号ことゴリさんの狙いだったのかなと感じるようになった。
あくまでも僕の想像だが、その狙いの根底には、「ロックとは挑戦だ」という心があるのかなと思う。
バンドのEPを執筆する際、中途半端に書きたくなかったので、バンド全員にインタビューさせてもらったのだが、その時ゴリさんがこう言っていた。
「以前GUSUSというパンクバンドで全国行脚していた。どこへ行っても、同じメンツでツアー。似たような客の前での演奏。そんな安定がつまらなかったんだ。 ロックとはもっと、挑戦的であるべきだ!」
その後しばらくして、JASONSに近い名古屋のミュージシャンの方に聞いた話だが、ゴリさんは自分の音源を東京中のライヴハウスに送って、出演希望を出していたようだ。
仲間内で呼んでもらうのではなく、こうべを垂れ、お願いするのではなく、自らの手で出演権を勝ち取り、勝負する。
『ロックとは挑戦。自分の力で、自分の音で勝負し、結果を掴みとる』
自らの音だけを信じ、媚びず、頼らず、未開の地、離れた地の関東に挑んでいく日々。
明日発表する第二章では、運命の土地、「福生」に彼らが初めて降り立った頃の話を語ろう。
彼らの音は、観客の心を揺れ動かすことができるのか。魂の炎を燃やすことができるのだろうか。
【DIRTY THIRTY】「不良」はカッコえぇ!いつの時代も、いくつになっても… ~2017年11月10日ell FITS ALL~
「不良」はカッコえぇ。
いつの時代でも。いくつになっても。
「不良」はモテる。
真面目な奴、勉強できる奴も凄いが、やっぱモテるのは「不良」。
女性だけでなく、男性からも惹かれる「不良」は、もうパーフェクト。
元気が良くて、仲間思い。
笑顔がカッコよく、自然体。
何があっても焦らず、動じず。
しっかりとした、太い信念を持つ。
根性があり、自分の決めた道を猪突猛進。
学生時代はもちろん、「ちょい悪」という言葉があるように、中高年になっても「不良」はモテる。
年齢を重ねた分、「不良」にも厚みが出て、円熟味が増し、一層カッコよくなる。
男にも女にも優しい。
社会のルールに惑わされず、自分の考えを大事に、自分の心に従って行動する反骨魂。
仲間を思い、人生を心から楽しむ…これが、大人になった「不良の流儀」かな。
僕は不良になれんかったな~。
しかし、今もなおめっちゃ憧れている。
さぁ、今回紹介するのはそんな「不良」。
男も惚れる「不良」の4人組。三重の四日市を拠点とする、ちょい悪バンド、Dirty Thirty。
彼らがいかに「不良」か、いかにカッコえぇかを。
昨年末名古屋で観たショーや過去に新宿で観たショー、CDを基に話そう。
ちょい悪バンドゆえ、ビールでも呑みながら、気楽にどうぞ。
「不良」ポイント①~全てを曝け出すオープニングに、登場SEは不要!~
通常、ライヴのスタートはこう。
セッティングして軽く音合わせて、暗転。緞帳(どんちょう)が上がったら、SEが流れ、会場を本番の空気に変え、メンバー登場…。
しかし、Dirty Thirtyは違う。
過去に観た2度のショー、2013年の新宿と2017年の名古屋。どちらもジャムセッションからのスタートだった。
音合わせは緞帳の裏でやらず、全部お客さんに見せる。普通なら準備中だからと見せないのに、全部、自分たちの等身大の姿を披露する。
やること全てに自信がある表れ。
音合わせで一旦捌(は)けることなく、バンドの呼吸を合わせたらそのままスタート。
「SEやら暗転やら、そんな“お行儀”など知るか」と言わんばかりに。
音合わせでのジャムは練習風景であり、またスタジオでの作曲風景だが、このバンドはジャムが音源化できるくらいにカッコえぇ。
曲としては成立してないが、ロックのカッコよさは十分放っている。
オーラというのかな。
また、現場でお互いの顔を見ながら、お互いの音を聴きながら、楽器一つ一つの音を重ね、積み上げていくその作業は、
「これから始まるステージの音に嘘、偽り無し」と証明している。
バンドメンバーの表情を見ていくと、皆えぇ感じの笑顔。それぞれの生活から一旦離れ、昔からの「仲間」へ戻っていくかのよう。
そして4人のおっさんがバンドへと666%戻った瞬間、本編がスタート。
「不良」ポイント②~既発曲でなくても、ショーを成立させたる!~
2017年11月。名古屋で観たショー。
1曲目とラストは、現時点での最新作である、2012年リリースの1stアルバム”Unconscious Violent Behavior”から。
他に3~4曲演奏されたが、それらは全て現在制作中の新譜からの曲。勝負に出た。
しかし、「不良」な彼らはそんなことは気にしない。
息の合った4人の演奏は、見事にオーディエンスをロックンロールさせ、聴くものを改めて惚れさせた。
そのショーの中身はどうか…
「不良」ポイント③~自分の決めた「道」を究めたパフォーマンスで魅せる!~
不良だからと言って、薄っぺらい、チャラい音ではない。その道を徹底的に極めた、大人の不良サウンド。見た目も音も太い。
その佇まいはどっしりしたもので、息が合った演奏は、4人各々のへヴィな音が掛け算となり、更にへヴィになる。
ドラムスは終始笑顔で楽しんでいるし、軽快なリズムでバックからバンドを支える。
ベースは頭を振って、身体を大きく揺らせ、指を弦の上に躍らせる。
そしてこのベーシスト、職人気質。
楽器は5弦ベースで音に拘っているし、MCも取らず前には出ないが、両足を地に、しっかり自分の世界に入って、筋肉質で、静かな体育会系といったカッコよさを秘めている。
時折メンバーを見ては微笑む、その仲間意識も大事。
このリズム隊は、大きくアクションを見せるも、決して弾きまくることなく、ぶれることもなく、楽曲主義。
曲を大事にしているのが重要。身体でしっかり演奏し、曲のワイルドさを観客の目にも焼き付けている。
そのリズムの上に、ロックンロールなリフ、速く刻むスラッシュリフを乗せ、観客を躍らせる2本のギター。
信頼のおける仲間による「乗れるリズム」の上を、時にソロイストとしてそれぞれが気持ち良さそうにソロを弾き、時にツインリードとして2人同じメロディーを綺麗にかましてへヴィメタルの醍醐味を楽しむ。
この2人、ソロは対照的。
上手の萩さんは様式美。構築されたかのようなドラマを見せ、へヴィメタルなソロを情感豊かに弾く。
一方、センターでギターヴォ―カルを取る鈴木さんは、直観型。気持ちの赴くままに渋くロックンロールに弾き倒す。
2人は衣装からして異なる。萩さんは黒とレッドウィングのブーツで綺麗にまとめ、鈴木さんは、MC5のTシャツでキメる。
音の違いはここからも分かる。
余談だが、この文章は何稿も書き直している。恐らく最終稿になるだろうという今、そのMC5を聴きながら書いている。
1969年のデビュー作にしてライヴアルバムの1st。
これが、爆音へヴィロックンロール、反骨魂満点のアティチュードに惚れる。
好きなバンドが好きな音から学ぶ。Tシャツからも新たな音楽、自分に合った音楽が学べる。
こうして、タイプが異なる2人のギタリストだが、共通点もある。
ただ弾き倒すのではなく「心」「渋さ」「味」を醸し出す。それぞれ独自の美学を感じられるギタリストだということ。
「不良」ポイント④~遊び心を忘れない~
へヴィメタルでいうと、彼らは様式美を持ったスラッシュメタルというジャンルに分類される。
スラッシュメタルとは簡単に言うと、速く、攻撃的で過激なへヴィメタル。しかし彼らには、その範疇に留まらない遊び心がある。
1stアルバム
”Unconscious Violent Behavior”
で聴ける、遊び心は、次の3点。
こういったジャンルではこれまであまり見受けられなかった試みを実践している。
(Ⅰ)ブルーズに源流を持つ、『スライドギター』でキメるMVとなった曲“Trust”。
(Ⅱ)”The Other Lies“という1曲目のインストゥルメンタル曲は、完全なるへヴィメタルの様式美。
一方で、カントリーのような陽気なインスト曲の”1949”を7曲目に置く。
その結果、1~6曲目までがA面、7~12曲目までがB面という、まるでレコードを思わせるスタイルの完成。
(Ⅲ)B面インスト後のギターと自分の声を混ぜるトーキングモジュレータ―でキメる“Mojo”
恐らく鈴木さんのロックンロール魂、そして萩さんの、幅広い音楽知識が活かされた結果であろう。
そう、萩さんはハリウッドレコードというCD、レコード、バンドグッズを販売するレコード店を経営している。
なんとビックリなのが、ハリウッドレコードでは、へヴィメタル、ハードロックに拘らず、ヒップホップ、パンク、レゲエ、クラブミュージックと多岐に渡る音楽を展開している。
スラッシュメタルにスライドギターなんて普通ではないし、トーキングモジュレータ―なんてもってのほか。笑
ところで、「トーキングモジュレータ―」のことを知らない方もいると思うので、少し紹介しよう。
先述の通り、ギターの音と人間の歌い声を合体させるのだが、やはりどんなサウンドか実際に聴いてもらうのが一番であろう。
アメリカはボストンが生んだ巨大なハードロックバンド。
AEROSMITHの”Sweet Emotion”
この冒頭の、独特な歪みを持った音がトーキングモジュレータ―。
彼らと同郷、ボストン出身のファンクを巧みに織り交ぜたハードロックバンド、Extremeの”No Respect”
”livin’ On A Prayer”と”It’s My Life”は、このモジュレータ―のリフで作られている。
動画の演奏シーンで、ギタリストの口元をよく観てもらえば分かる。
調べてみると、トーキングモジュレーターは、意外とポップやロック系でも使われているようだ。
しかし、このサウンドは、少しでもミスしたらおとぼけになってしまう。また、コツを掴むまでにけっこう時間かかるらしい。
これを使いこなし、まさかのへヴィメタルな楽曲に使用するという発想が見事。
このような、他のバンドでは見受けられない遊び心は、やっぱり信念と自信があればこそだろう。
「他がなんと言っても、やりたいことをやったる!」という心意気。
さて、長々とDirty Thirtyの魅力を語ってきたが、今回はこのへんで締めよう。
次回は、期待の新作リリースの時だろうか。
もうずいぶん長く曲作りをやっている、というその新作の全貌がまもなく発表されることを期待したい。
ただ、この11月のショーを観る限り、傑作に間違いない。
「1stとは異なり、へヴィメタルの様式美がもう少し強めな、しかし男の美学が光る曲が出揃うのでは?」というのが、僕の予想。
早く聴きたいが、それはバンドのこと。僕がとやかく言うものではないので、その時をゆっくり、じっくり、楽しみに待つことにする。
加えて、1stアルバムのアートワークが絶妙にカッコえぇことも書いておきたい。
- 都市と工場の煙、四日市の街。
- それを嘲笑うかのように、へヴィメタルのメロイックサインでビール瓶を掴み、一気呑み。
- ちょっとした汚れ具合は、レコードの紙ジャケをイメージしたモノ。
「不良」っぽさを感じる、アメリカのコミックタッチなこのイラストも秀逸。
ということで、2ndはアートワークも楽しみかな?
自分たちの好きな道を究めた、仲間思い4人組のおっさんサウンド。
キャリアを重ね、円熟味を増し、渋みはどう表れるのか、乞うご期待!
#dirtythirty #heavymetal #hollywoodrecords #ハリウッドレコード #へヴィメタル #ライヴハウス #livenhouse
“音楽を観る"という魔法 ~あなたが音楽世界をワクワク・ドキドキしながら探求する方法 ~
僕は駆け出しの音楽ライター。「監督」という名前で、CDのレビューをいくつか書いたことがある。
そんな僕は、音楽がめっちゃ好き。
何かのバンド名を検索してこのブログに出会ったあなたも、きっと音楽が大好きだろう。
僕は、家の中や通勤中、仕事の合間など、いつでも音楽を聴いている。
音楽は僕にとってのガソリン。
耳から入った音楽は全身を駆け抜け、手や足、脳ミソや心臓にパワーを伝え回ってくれる。そのおかげで、僕は每日元気にやっていける!
ところで、あなたは音楽とどう向き合っているだろう?
作業しながら、PCやオーディオから流している?
スマートフォンや携帯音楽プレイヤーに入れて、通勤・通学やランニング中に聴いている?
いずれにせよ、何気なく音楽を聴き、元気を貰っている人がほとんどだと思う。
僕も、同じように日々音楽を楽しんでいる。
しかし、ある時気づいた。
音楽との向き合い方には、もう一つの方法(=Another Style)があるという事に。
音楽をとんでもなく面白く楽しむ魔法を発見したのだ!
それは、「音楽を観る」ということ。
音楽を観る??
いやいや。
お前何言ってるの。って?
音は目に見えない。って?
その通り。実際音楽は見えない。
音を可視化する方法として『楽譜』があるけれど、楽譜の5本線上のおたまじゃくしを見ても、音は聴こえてこない。
僕が伝えたいのは、音楽を「見る」ではなく、音楽を「観る」。
音楽を聴いていて、色が見えたり、景色が見えたことはない?
それ!その感覚!
歌詞カードを読みながら音楽を聴いていたら、頭の中にまるでPVみたいな、短編映画ができたことはない?
そうそう、それ!
歌詞を読んで、音から感じる映像を描く感じは、『楽譜』よりも、『小説』を読む感覚に近いかもしれない。
文章だけで、映像を、イメージを脳内に思い浮かべる感覚。
"音楽を観る魔法"はこうして生まれた
ここで少し、僕がこういう感覚を身に付けた経緯を話したい。
僕はもともと映画が好きで、映画館の初体験は3歳と、けっこう早い。初めて観た映画はあまり子供っぽくない「グレムリン2」。
何でこれを選んだのか分からないけれど、この可愛くも毒々しいモンスター映画が記憶の中で一番古い映画なのだ。
幼少期はウルトラマンやゴジラ、スーパー戦隊ものなどの特撮・ヒーロー系にハマり、空想の世界で自分なりのヒーローや怪獣を作って遊んでいた。
小学4年生の頃、運命を変える映画と出会った。
「スター・ウォーズ特別篇エピソード4」。特別編として追加シーンが含まれていた。
その地球で撮影したとは思えないシーンの連続に、1970年代後半に撮影したとは思えないシーンの連続に、ただただビックリした。
感情移入して映画の世界に入り込んだ僕は、ルーク・スカイウォーカーやハン・ソロと一緒に宇宙を冒険して、ドキドキ・ワクワクの連続に大興奮した。
そこから、SFやアクション映画を観たおす日々。
空想して、妄想して、自分なりのSF映画、アクション映画を脳内で作っていた。
少し音楽の話からずれたけれど、こうした幼少期の体験から、"音楽を観る魔法"が生まれたのは間違いない。
僕の人生を変えた音楽
やっと音楽の話。
中学校の頃は、今ほど音楽漬けの日々ではなかった。
ゆる~くJ-POPは聴きつつ、映画で流れたAEROSMITHを聴きつつ、映画雑誌に載っていたEMINEMやDr.Dre 50 CentなどのHIP HOPを少し聴いていたくらい。
「映画を観れば音楽を楽しめるから、別に音楽にハマることはない」。なんて思っていた。
しかし、人生を変える出会いは突然現れるもの。
高校1年生の頃にTVのCMで観た、BON JOVIの”It’s My Life”のPVにやられた。
当時15歳。
「なんやねん、このかっこえぇのは!!!!」
好きになればどっぷり一途にその世界を探求しまくる性格の為、とにかく音楽を聴き漁り、雑誌を読み漁り、知識をつけていった。
僕の父親は、The Beatlesから始まり、70年代のQueenやプログレッシヴロックを通過しつつ、HR/HMが大好きになった人。
そんな父親の手解きを受け、CDラックにある作品を手当たり次第に聴いていった。
地元の小学校からの友達もヴィジュアル系からHR/HMを少し噛んでたので、情報交換しつつ、高1の後半か高2の春に出会ったのが、Dream Theaterというバンド。
とんでもない技術で複雑な曲からメロディアスな曲まで演奏するバンドだ。
J-POPしか知らない人にはビックリの、最長で50分近い大曲を書き上げるバンド。
そんなへヴィメタルバンドが作ったコンセプトアルバムが僕の人生を変えた!
コンセプト・アルバムとは?
ロックには、『コンセプト・アルバム』と呼ばれるものがある。
『コンセプト・アルバム』には大きく分けて2種類ある。
- 同じテーマを持つ曲が集まったアルバム
- 10曲なら10曲全てで、一つの物語を描くアルバム
この時聴いたのが、Dream Theaterの7枚目スタジオアルバム「Metropolis Pt. 2: Scenes from a Memory」
2.に当てはまる、収録曲で一つの物語を描くアルバム。『輪廻転生』をテーマとした物語だった。
へヴィメタルとしてのかっこよさはもちろん、風景が簡単に目に浮かぶ曲、情景の描き方、場面転換が巧みで、その上を時に語り部のように、時にはミュージカルやオペラのように演じるヴォーカル。
僕のワクワクは止まらず、脳にあるスクリーンには、映画が流れていた。
「音楽は、耳で観る映画だ!」と気づいた瞬間だ。
- アーティスト: ドリーム・シアター,ジェイムス・ラブリエ,ジョン・ペトルーシ,マイク・ポートノイ,ジョン・マイアング
- 出版社/メーカー: イーストウエスト・ジャパン
- 発売日: 1999/10/27
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音楽に色を見るミュージシャン
世界的なへヴィメタルバンド、SlipKnotのヴォーカル、コリィ・テイラー。
彼は、確か日本唯一のハードロックヘヴィメタル雑誌で30年以上の歴史を誇る『BURRN!』という雑誌に掲載されたインタビューだったと思うが、こんなことを言っていた。
「ある曲を聴いた時、色が見えたんだ。朱色だ。そして閃き、詩を書いた。その曲こそ、“Vermillion(=朱色)”だ」
音楽を観る、とはまさにこのことだ!
目を閉じて、リラックスし、耳に集中して、音楽に聴き入ろう。
すると、頭の中に色が見える。
次に風景が見え、空気や風の流れが感じられる。
街や自然の音が聴こえ、詩の通り、人物が動き出す。
あなたの頭の中には、どんなイメージが膨らみ、何が見えているだろう?
"音楽を観る"魔法は音楽業界を救う
"音楽を観る"魔法には、現代の音楽業界が失ったものを取り戻す力がある。
現代の音楽業界が失ってしまったのは、『音楽を届ける』こと。
ここで質問。 あなたは普段、どうやって新しい音楽を見つけているだろう?
雑誌でレビューを読んだり、レコード店でのポップを読んで、はたまた雑誌の紹介文を読んで、興味が出たら聴いてみる。
よっぽどコアの音楽ファンでない限り、大体はこんな感じだと思う。
よくあるスタイルだけれど、ここに大きな落とし穴がある。
それは、「限られた分野の音楽しか楽しんでいないこと」だ。
どういうことか説明したい。
まず、目には見えない音楽を人に伝えるにあたって、
一番分かりやすいのは「ジャンル」だ。
ロックやジャズ。ヒップホップにブルーズ、レゲエ・・・
ジャンルが分かると、リスナーはなんとなく「こんな音かな~」と想像できる。
昔の音楽ジャンルは少かった。
60年代や70年代なんて10個...せいぜい20個くらいだったと思う。
では、2018年現在、音楽のジャンルはいくつあると思う?
音楽のジャンル一覧 - Wikipediaを数えみて、ビックリした!
なんと約370ものジャンルがある!
これはきっと、世界中のミュージシャンが音楽の虜になって、どんどん新しい音楽を生み出したからだろう。
新しい楽器で、新しいエフェクターや機材を使って、音を探求し、昔では考えられないほどの種類が生まれたのだ。
サブジャンルも多く含まれているとは言え、370。
驚愕の数字だが、その結果、恐ろしいことが起きている。
細分化された世界の音楽しか知らない
せっかく世界には無数の音楽があり、今もなお新しい音楽がどんどん生み出されているのに、ジャンルという縛りのせいで、ほんの一部としか出会えていないのだ。
80年代から90年代にかけて全盛期を迎えたアメリカの音楽専門のケーブルテレビ『MTV』では、特にジャンルを特定せず様々なミュージックビデオが流れていた。
ラジオだってそう。
当時の人は、MTVやラジオで新しい音楽と出会っていただろう。
しかし今はどうだろう?
例えば、アマゾンでCDを買った、または検索したとする。
すると、「あなたにぴったりのおすすめ」という形で、そのバンドの別の作品やまた違うバンドのCDが紹介される。 でも、きっとそれは同じような音だろう。
既存のデータを基にコンピューターが分析し、選ぶのは似たような音なのだ。
世界にはもっともっと多くの音楽があるのに、こんなに残念なことはない。
確かに表面的なニーズは満たしていると思う。しかし、本当の意味で「音楽を届ける」には、これだけで良いのだろうか?
新たな音楽ジャンルとの出会いを生み出すのも、音楽業界の大きな役割ではないだろうか?
新たな音楽ジャンルとの出会いは、あなたの音楽世界をもっと豊かにするのではないだろうか?
では、どうすれば、人々はもっと、音楽の世界を自由に旅できるのだろうか?
好奇心全開で音楽の世界に飛び込み、いろんな音楽を発見し、楽しめるのだろうか?
答えはそう。
"音楽を観る"魔法を使えばいい!
必要なのは「音楽が好き」という心と、「空想・妄想」という力。
誰もが持っている力で、今すぐ魔法を使って音の世界を自由に旅できるのだ!
僕の好きなジャンルはへヴィメタルだが、この魔法を知ってからは、どんどん音楽自体が好きになってきた。
もちろん、好きな音、苦手な音はあるけれど、最初は苦手だった音楽も、今では大好きになっていたりする。
それもこれも、"音楽を観る"魔法のおかげ。
真剣に音楽を聴き始めて15年。僕の音楽世界は、巨大な好奇心と共に今も開拓中だ!
このブログを通して伝えたいこと
このブログでは、音楽用語は最小限に、僕が大好きな音楽を紹介する。
CDやライヴ、僕が楽しんだいろんな音楽を、
「音を聴いて何が見えるか、どんなイメージが浮かぶか」をテーマに書いていく。
もし同じバンドが好きな人なら、「こういう聴き方、観方があるのか」と知って、そのバンドをより一層楽しんでくれたら嬉しい。
また、初めて知るバンドについては、「こんな体験ができる音ってどんなんだろう。」と興味を持ち、その音楽を検索して、気に入ればぜひ、CDを買ってほしい。 そしてライヴハウスへ足を運んでほしい。
こんな気持ちで、音楽を紹介していくつもりだ。
さぁ、世界中にある音楽を、楽しんでいこう!
そして、あなただけの新しい音楽の楽しみ方(=Another style for music)を創り上げていこう!